香港金融界が人材不足 厳格な「ゼロコロナ」対策に嫌気、欧米の駐在員数千人離脱か
在香港米国商工会議所が最近行った調査に応じた会員の40%以上が、香港を離れることを考えていると答えた。大半は、第一の理由として渡航制限を挙げている。
同商工会議所のタラ・ジョセフ所長は、「資産運用という最も成長の速い分野では、きちんとした訓練を受けた人材の供給は(コロナ禍がなくても)不足している。厳格な渡航制限がいつまでも続くなら、人材不足はなおいっそう深刻になる」との考えを示した。「業界関係者の多くは、いずれはこのセクターの多くのポストが中国本土の人材で占められると予想している。結果として大規模な人材の移動が生じる」
香港政庁は人材不足という懸念を軽視してきた。新型コロナ対策が香港全体の利益にとって最優先課題であり、専門的人材の流出やグローバルな金融ハブとしての地位にダメージが及ぶとしても、それに対応するために人材への投資を行っていると説明してきた。
香港政庁の報道官は「香港は域内だけでなく世界中から人材を集め続けることができると信じている」と述べた。「今後も金融セクターの多角的な発展を推進し、長期的な香港経済の発展と調和するよう、域内人材の育成、さまざまな領域での域外人材の誘致を進める」
出国ラッシュ
香港の統計局によると、2020年半ばから21年半ばにかけて7万5000人以上が香港を離れたことで、人口は1.2%減少した。入境管理当局の入出域データを見ると、香港では昨年9月以降、5カ月連続で純流出を記録している。
その一方で、昨年、「一般雇用政策」の対象となるすべての国からのビザ申請総数は3分の1減少して1万0073人となった。金融サービスセクターのビザ申請者数は23%減少した。
ヘッドハンティング企業ロバート・ウォルターズで中国南部・香港地域金融サービス担当ディレクターを務めるジョン・ムラーリー氏は、「香港に人材を呼び寄せようとしてもうまく行かない」と語る。
「香港に行く意志があるのは、国際経験があるか、非常にシニアの幹部クラス、あるいはとても若い独身者だけだ」とし、「香港の実状を見ると、金融サービス分野の人材プールは確実に縮小している」と述べた。