インドネシア、突然の石炭輸出禁止 火力発電用に輸入する中国、そして日本に影響は?
インドネシア東カリマンタン州沖に停泊する石炭運搬船 Willy Kurniawan - REUTERS
<2060年までの温室効果ガス排出ゼロを宣言したものの、石炭頼みの実態が露呈>
1月1日、インドネシア政府は31日までの約1カ月間、石炭の対外輸出を禁止する方針を明らかにした。これに伴い国内の石炭採掘会社は収入が閉ざされると同時に、中国、日本などの石炭輸入国への影響も懸念される事態となっている。
今回の「石炭禁輸」の背景には、インドネシア国内の電力事情がひっ迫し、深刻な停電が引き起こされかねない状況がある。このため政府は石炭会社に対して対外輸出用の石炭を国内に回すことを求め、輸出禁止へとつながった。
ジョコ・ウィドド大統領は3日、今回の政府からの「国内供給義務(DMO)」に従わない石炭会社に対しては輸出禁止措置や事業許可取り消しを含む厳しい措置で対処する方針を明らかにしており、政府主導による強制的措置となっている。
このため石炭産業界からは不満も高まっており、ジョコ・ウィドド政権によるエネルギー政策の見通しの甘さが改めて浮き彫りとなっている。
インドネシアは2021年10月31日から11月13日まで英・グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)などで「2060年までの温室効果ガス排出量の実質ゼロ」を目指す脱炭素社会達成を表明し、炭素排出量が多い石炭からの脱却を内外に表明している。
しかしクリーンエネルギーや水力発電などへの転換が進んでいないことから、石炭に依存している現状を脱却するのは実質的に困難で、「公約」である炭素排出量削減の目標達成は「絵に描いた餅」になりそうな気配だ。
禁輸は中国、日本など輸入国にも影響
インドネシアは国内の発電の60%以上を石炭火力発電に頼っており、世界で10番目にエネルギー関連の二酸化炭素排出量が多くなっている。
またインドネシアは世界最大の石炭輸出国で、4億5000万トンの石炭生産量のうち2900万トン(2021年1月)を輸出している。最大の輸出相手国は中国で約32%を輸出している。輸出相手国は中国のほか、インド、フィリピン、マレーシア、韓国そして日本となっている。
このため1カ月とはいえインドネシアからの石炭輸入が途絶えることで、中国や日本に影響が出ることや石炭の市場価格への波及が懸念されている。