節目突破したドル高/円安 原油相場や中国経済次第で反転の可能性も
9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比19万4000人増と、市場予想を大きく下回ったが、過去の7月、8月分が上方修正されたほか、失業率が低下するなど、「テーパリング(量的緩和の段階的縮小)開始時期に影響は与えない」(国内証券)との見方が大勢だった。
ドルが急ピッチで上昇したことを受け、目先は短期的な調整売りが出る可能性があるが、米経済が回復する中では「緩やかな米金利の上昇とドル高の流れは続くのではないか」と、バンク・オブ・アメリカ、チーフ為替・金利ストラテジストの山田修輔氏はみている。
中国の景気減速懸念
しかし、中国の景気減速懸念がドル/円の見通しに影を落としている。
東南アジア諸国では新型コロナワクチンの接種率が先進国に比べて低く、冬場の感染再拡大のリスクがある。中国と経済的な結び付きの強い東南アジアでの感染拡大は、自動車などの部品調達の妨げになり、中国での組み立て生産に支障が出るおそれがある。
日本総研では中国の21年の実質成長率を8.4%のプラスと予測しているが、「足元の電力不足問題などを背景に下方修正含みだ」と調査部主任研究員、関辰一氏は話す。「石炭不足問題の解消はいつになるか見通せない状況」だという。
国際通貨基金(IMF)は12日、中国の2021年の成長率を8.0%と0.1ポイントと小幅ながら引き下げた。中国経済の減速懸念が意識されれば、クロス円を中心に円高傾向が強まる可能性もある。
中国恒大問題をきっかけに、「中国からマネーが流出し、その行き場が安全資産の米債に移ることも考えられる」と楽天証券のFXディーリング部・荒地潤氏は指摘する。米債にマネーが逃避すれば、米金利が低下し、ドル/円には一転して下落圧力がかかる可能性もある。
(浜田寛子 取材協力:森佳子 編集:伊賀大記)
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