節目突破したドル高/円安 原油相場や中国経済次第で反転の可能性も
ドル/円の上昇に弾みがついている。写真はドルと円の紙幣。2013年2月撮影(2021年 ロイター/Shohei Miyano)
ドル/円の上昇に弾みがついている。ここ2年の天井だった112円を抜け2018年11月以来の114円台をうかがう展開だ。インフレ懸念が強まる中、米金利が上昇しているのが大きな要因だが、原油高が止まらずリスクオフが起きた場合や中国経済の減速が大きくなれば、一転して円買いが強まるとの見方もある。
原油高とシンクロ
いまのマーケットの「メインテーマ」はインフレだ。そのインフレ懸念を強めているのが商品価格、特に原油価格の上昇となっている。新型コロナウイルス禍からの景気回復に伴う需要増加に加え、中国など主要国での電力・ガス不足といった要因が背景となり、上昇が止まらない。
SMBC日興証券のチーフ外債・為替ストラテジスト、野地慎氏は、今のドル高は原油高とシンクロしていると指摘する。ドル/円に限らず、石油製品の自給率が低いユーロなども弱く、「資源を持たない国」の通貨が売られる展開となっているという。
「脱カーボンの潮流の中、石油輸出国機構(OPEC)やシェール業界が生産能力拡大に及び腰であり、容易に原油の供給が増えそうになく、むしろ原油高局面の長期化を介して各国経済のダメージを深くする可能性がある」と野地氏はみる。
原油高は今のところ円安要因だ。日本はエネルギー輸入国のため、原油高は交易条件の悪化を通じて円売り材料になる。しかし、バークレイズ証券のチーフ為替ストラテジスト・門田真一郎氏は中長期的にみて、「今後、原油高が行き過ぎてリスク回避姿勢が強まった場合、安全通貨としての円買いが進む可能性もある」と指摘する。
米金利上昇が「仲介」
原油高(インフレ)とドル高の間を「仲介」しているのは米金利上昇だ。米10年債利回りは今年6月以来の1.6%を付けた後、足元は1.5%台に調整しているが、5年債利回りは依然として2020年3月以来の1.0%台で推移している。
インフレは全般的にみれば金利上昇要因だが、12日の米債市場では景気悪化を意識 して長期金利が低下する一方、金融引き締めを意識して短期金利が上昇、金利曲線がツイスト・フラット化した。最近のドル/円は短中期金利との連動性が高い。