テーパリングで意見対立 FRB議長パウエルに総意形成の難題
FOMC内の意見対立は、あるレベルで見ればささいなものに過ぎない。ウォラー理事が先に提案したように、就業者数の力強い伸びを受けて9月にテーパリングを発表するか、あるいはブレイナード理事が言うように、少なくとも11月2─3日のFOMCまで待つかだ。
もう1つの争点は、セントルイス地区連銀のブラード総裁の推す急速なテーパリングと、ダラス地区連銀のカプラン総裁が望む段階的なテーパリングのどちらを選ぶかというもの。
しかしシカゴ大学ブース経営大学院のランドール・クロズナー教授は、小さな意見の相違も積もれば山となる、と指摘する。
クラリダFRB副議長が4日、インフレ率の高止まりについてパウエル議長よりも強い懸念を示し、2023年初めという具体的な利上げ開始時期に言及したことは、一部幹部の間でムードが変わりつつある兆しかもしれない。
ハイ・フリークエンシー・エコノミクスの首席米国エコノミスト、ルビーラ・ファルーキ氏は「FOMCの中核メンバーが政策変更時期の案を示すとは驚きだ」と述べた。
妥協案か
FOMC内でテーパリングと利上げを急ぐべきだとの意見が強まっていることから、パウエル氏は中核メンバーを味方に付けておくために早めに動かざるを得なくなるかもしれない。
その場合、2013年の歴史が繰り返されることになる。パウエル氏と他の理事2人はバーナンキ氏を説得し、実際に反対票を投じることなくテーパリングを表明させることに成功した。バーナンキ氏は回顧録で「私は彼らに、証券購入に関する私の意見はあなた方と異なるが、あなた方の意向を取り入れるよう最善を尽くすと告げた。『理事会の支持を得られなければ議長としての私の立場は維持できない』と話した」と振り返っている。
明確なのは、パウエル氏が造反を防ぐために妥協案の策定を迫られるであろうことだ。
ダラス地区連銀のカプラン総裁は意見対立の表面化について「FOMCは討論と対立がある時に最善の結論を出せると考えている」と強調するとともに、「(現在の対立は)より良い政策決定につながる可能性の方がずっと大きい」と語った。
(Ann Saphir記者 Lindsay Dunsmuir記者)
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