中国、規制強化で時価総額110兆円消失 欧米投資家も見直しの動き
経験豊富な投資家なら誰でも、金融市場は問題が起きれば極端に振れると言うだろう。2020年2月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)
経験豊富な投資家なら誰でも、金融市場は問題が起きれば極端に振れると言うだろう。しかし、その市場が世界第2位の経済大国で、政府がゲームのルールを変えると決めたらどうなるだろうか。
中国ではこの数カ月間に電子商取引、個人事業主が単発の仕事を請け負う「ギグエコノミー」、受験産業、直近ではオンライン保険などの業界で次々と規制が強化され、株式市場で2月以降に1兆ドル近くの時価総額が消失した。
外国投資を呼び込むために米市場にも上場している大企業にとって、2021年はすでに世界金融危機後で最悪の年となっている。
もちろん回復の可能性はあるが、容易なことではない。アナリストの多くが混乱は収束に向かうと確信しているとはいえ、それがいつなのかを知るのは、中国共産党指導部のみだ。
ジャナス・ヘンダーソンのマルチアセット部門を率いるポール・オコナー氏は「投資家はショックを受けている。今回の動きは中国の企業利益見通し、バリュエーション、投資家心理などに大きな影響を与える」と指摘した。
だが、影響の程度はいかほどだろうか。
モルガン・スタンレーの試算によると、MSCI中国株指数は今年、世界株指数に対して記録的な出遅れとなっており、足元では1年後の利益見通しに基づくPER(株価収益率)が13.9倍と、MSCI新興市場株指数に対して5%のプレミアムが乗っている。
年初は約17倍。モルガン・スタンレーは13倍まで下がる可能性があると見ている。
今回の混乱で中国株に強気だったアナリストは、損害を見極めようとしているところだ。
一連の規制強化が発表される前の3月時点で、MSCI中国株指数構成銘柄の1年後株価目標の平均コンセンサスは、1年前と比べて40%ほど高かった。
リフィニティブのデータによると、大半のアナリストの投資判断は電子商取引大手のアリババ、インターネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)などで少なくとも「買い」、年初来で株価が90%近く下落した新東方教育科技でも「ホールド」あるいは「買い」となっている。
ジャナスのオコナー氏は「業績見通しと投資判断を引き下げる動きは、まだ始まったばかりだ」と述べた。
国内で負債が最も多い不動産開発会社の1つ、中国恒大集団は、既に時価総額がピーク時から半分以下に縮小。業績見通しに基づくPERが約13倍と、同業他社を大きく下回っている。
先行きは明か暗か
過去5年間に8000億ドル余りの資金をつぎ込んできた投資家が、今後数十年にわたり中国が世界の金融市場にとって、最大のけん引役になるという賭けをあきらめることはなさそうだ。