最新記事

ビジネス

海外相手のビジネスで、上手くいかない人が陥りがちな「異文化の罠」とは

2021年6月29日(火)19時48分
flier編集部

荒木 商社時代には産業機械を扱われていましたが、グロービスはサービス業。海外展開をするうえで違いはありましたか。

高橋 形のある機械と違い、比較的高額の無形物を売るというのはハードルが高かったです。サービスを言語化して現地のクライアントに買ってもらうという仕事を通じて、相当鍛えられました。しかも、当時、シンガポールでは「そもそもグロービスって何?」と知られていない状況でしたから。

荒木 ブレークスルーのポイントは何だったのでしょうか。

高橋 結局は志ですね。ここでいう「志」には2つの意味があります。1つは、そもそもなぜシンガポールに来たのかという私自身の志。これは明確なものがありました。

もう1つは、グロービスのMBAコースでも「志」を扱っている通り、「ビジネスにおいて志は大事だ」とアピールしたことです。

英語だとpersonal missionと訳しますが、それをシンガポール人に話すと、「たしかにビジネスに志は要るよね。シンガポール人は今やお金のことばかり考え、建国の理念を忘れてしまっている」と意外に共感を得たのです。グロービスが東南アジアでも受け入れられると手応えを掴めました。

荒木 本書にある「志の自覚」のための4つステップ。これは面白いですね。

210629fl_tak03.png

グロービス提供

高橋 志というのは、最初から明確に持っている人もいますが、多くの人はそうではないでしょう。志は4つのステップで高まっていくと解説しています。

最初はやはり能力アップをしないといけないということで、基礎固めが大事です。ビジョンを描くにしても、ビジュアル化したり、言語化したりするための能力、思考力が要ります。まずは自分を鍛えましょう。

ステップ2は、自分をいろいろな所にさらしていきましょうというエクスポーズです。想定外のことに出くわすことで自分が分かってくる。志は自分一人で抱えず、人との比較で磨かれます。

ステップ3、ここまで来て初めてチャレンジという段階です。能力も高まっていろいろできてくる頃で、チャレンジしようという方向性と同時に、守りに入ろうとする自分も出てくる。パウロ・コエーリョの『アルケミスト』(角川文庫)に「傷つくのを恐れることは、実際に傷つくよりもつらいことだ」という言葉がありますが、恐れを乗り越えていく段階です。

ここを乗り越えると最後のステップ、「シンクロニシティ」で、向こうの方から自分にいろいろと声が掛かるようになります。

荒木 この最初の基礎固めの段階で、「自分が何者か」みたいな悩みを抱えてグロービスの門をたたかれる人は多いですね。そして、自分をさらして、恐れを乗り越えて、自分が呼ばれている感覚が出てくる、ということですね。

高橋 はい。出口治明さんもリーダーに必要な教養を身につけるために、「人」「本」「旅」が重要だと言われていますが、まさにそれに近いですね。勉強して、旅に出て、と。

210629fl_tak04.jpg
人生を面白くする 本物の教養
著者:出口治明
出版社:幻冬舎
flierで要約を読む

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB総裁ら、緩やかな利下げに前向き 「トランプ関

ビジネス

中国、保険会社に株式投資拡大を指示へ 株価支援策

ビジネス

不確実性高いがユーロ圏インフレは目標収束へ=スペイ

ビジネス

スイス中銀、必要ならマイナス金利や為替介入の用意=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 7
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 8
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中