海外相手のビジネスで、上手くいかない人が陥りがちな「異文化の罠」とは
荒木 商社時代には産業機械を扱われていましたが、グロービスはサービス業。海外展開をするうえで違いはありましたか。
高橋 形のある機械と違い、比較的高額の無形物を売るというのはハードルが高かったです。サービスを言語化して現地のクライアントに買ってもらうという仕事を通じて、相当鍛えられました。しかも、当時、シンガポールでは「そもそもグロービスって何?」と知られていない状況でしたから。
荒木 ブレークスルーのポイントは何だったのでしょうか。
高橋 結局は志ですね。ここでいう「志」には2つの意味があります。1つは、そもそもなぜシンガポールに来たのかという私自身の志。これは明確なものがありました。
もう1つは、グロービスのMBAコースでも「志」を扱っている通り、「ビジネスにおいて志は大事だ」とアピールしたことです。
英語だとpersonal missionと訳しますが、それをシンガポール人に話すと、「たしかにビジネスに志は要るよね。シンガポール人は今やお金のことばかり考え、建国の理念を忘れてしまっている」と意外に共感を得たのです。グロービスが東南アジアでも受け入れられると手応えを掴めました。
荒木 本書にある「志の自覚」のための4つステップ。これは面白いですね。
高橋 志というのは、最初から明確に持っている人もいますが、多くの人はそうではないでしょう。志は4つのステップで高まっていくと解説しています。
最初はやはり能力アップをしないといけないということで、基礎固めが大事です。ビジョンを描くにしても、ビジュアル化したり、言語化したりするための能力、思考力が要ります。まずは自分を鍛えましょう。
ステップ2は、自分をいろいろな所にさらしていきましょうというエクスポーズです。想定外のことに出くわすことで自分が分かってくる。志は自分一人で抱えず、人との比較で磨かれます。
ステップ3、ここまで来て初めてチャレンジという段階です。能力も高まっていろいろできてくる頃で、チャレンジしようという方向性と同時に、守りに入ろうとする自分も出てくる。パウロ・コエーリョの『アルケミスト』(角川文庫)に「傷つくのを恐れることは、実際に傷つくよりもつらいことだ」という言葉がありますが、恐れを乗り越えていく段階です。
ここを乗り越えると最後のステップ、「シンクロニシティ」で、向こうの方から自分にいろいろと声が掛かるようになります。
荒木 この最初の基礎固めの段階で、「自分が何者か」みたいな悩みを抱えてグロービスの門をたたかれる人は多いですね。そして、自分をさらして、恐れを乗り越えて、自分が呼ばれている感覚が出てくる、ということですね。
高橋 はい。出口治明さんもリーダーに必要な教養を身につけるために、「人」「本」「旅」が重要だと言われていますが、まさにそれに近いですね。勉強して、旅に出て、と。
人生を面白くする 本物の教養
著者:出口治明
出版社:幻冬舎
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