最新記事

環境

トナカイとオーロラの地スウェーデン北部へ再生エネルギー狙い企業流入

2021年6月7日(月)09時13分

鉱山大手LKAB、国営エネルギー大手・バッテンファル、鉄鋼大手SSABの合弁会社であるハイブリット(Hybrit)も、低コストの再生可能エネルギーにひかれて、スウェーデン北部、北極圏のイエリバレに進出した。同社は化石燃料を使わない製鉄を目指している。

同業のH2グリーン・スティールは、北極圏のわずかに南に位置するボーデンで、2030年までに化石燃料を使わない鉄鋼500万トンを生産する計画。ボーデンにほど近いルーレオにはハイブリットが化石燃料を使わない小規模な製鉄プラントを持っている。

米フェイスブックはルーレオで87億クローナ余りを投資し、電力を再生可能エネルギーのみで賄う初のデータセンターを設置した。

未来を先取り

バッテンファルの脱炭素部門を率いるミカエル・ノルドランデル氏はスウェーデン北部について「鉱工業が将来どのように姿を変えていくのかが見える窓のようなものだ。諸外国の将来像さえ、のぞけるかもしれない」と話す。

ルーレオなどの地域を含むノルボッテン県によると、同県は2016年のスウェーデン全体の温室効果ガス排出に占める比率が11%前後だった。ルーレオのカリナ・サメリ市長は「かつて企業はわれわれの気候変動問題への取り組みを邪魔していた。しかし今では変化の推進役になっている」と話す。

アワ・ワールド・イン・データのウェブサイトによると、スウェーデンは2017年の国民1人当たりの二酸化炭素排出量が4.26トンで、世界平均の4.8トンを下回る。

クリーンエネルギーの需要拡大は、直接、間接的に数千万人の雇用を生み出した。

ノードマーク雇用相は4月、「職を探すなら、北部への移動に目を向けるときかもしれない」と述べた。

スウェーデン当局によると、最も北に位置するノルボッテン県とベステルボッテン県は2020年の失業率がそれぞれ6.7%、6.4%で、全国平均の8.5%を下回り、国内最低。これは産業のグリーン化が一因だという。

ボーデンにあるH2グリーン・スティールのプラントの雇用創出は直接、間接合わせて1万人となる見込み。

ルーレオのサメリ市長によると、同市は今後20年間の労働需要を賄うために居住者を2万5000人増やす必要があるという。

(Simon Johnson記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロンドンなどの市長選で労働党勝利、スナク政権に新た

ワールド

バイデン大統領は「ゲシュタポ政権」運営、トランプ氏

ワールド

ロシア、ゼレンスキー大統領を指名手配

ワールド

インドネシアGDP、第1四半期は前年比+5.11%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中