最新記事

EV

EVシフトの盲点とは? トヨタが「水素車」に固執するこれだけの訳

2021年6月11日(金)15時55分
前田 雄大 *PRESIDENT Onlineからの転載
トヨタ自動車の豊田章男社長

トヨタはEV化の盲点を突く考えを持っている?(写真は2019年1月、米デトロイトのモーターショーに出席した豊田章男社長) Brendan McDermid-REUTERS


自動車の電動化(EVシフト)が進んでいる。「EnergyShift」発行人の前田雄大さんは「トヨタをはじめとする日本勢が電動化で出遅れているとの見方があるが、それは間違いだ。トヨタがEVよりも水素自動車(FCV)にこだわり続けているのには理由がある」という──。

なぜ「EV化」ではトヨタの名前がないのか

2016年のパリ協定の発効以後、国際社会では着々と脱炭素化が進展していた。加えて昨年9月、中国の習近平国家主席が国連総会で、2060年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言。アメリカも脱炭素を全面に打ち出すバイデン政権が発足したことで、その流れは決定的となった。

自動車のEV化はもはや世界的な潮流だ。欧州勢は2017年にいち早くガソリン車の廃止を打ち出し、ハイブリッドを飛び越していち早くEV化に着手。中国、北米もEV化とガソリン車廃止の施策を発表し、世界の主要市場はEV化という流れで一本化している。

日本の主力産業である自動車産業も例外ではない。だが、この過熱するEV戦線に日本勢、特にその筆頭であるトヨタの存在感がないのである。

2020年、EVを積極的に展開する米国のテスラ社の時価総額がトヨタを上回ったことは衝撃を与えた。また、2020年の世界におけるEV売上ランキングにおいて日本勢がトップ10社に入らなかったことも重なり、日本では「EV出遅れ論」もささやかれる。

リーフを一早く開発し、EV化に10年以上も取り組んできた日産や限定的に市場投入している例を除けば、市場においてEVで勝負できている日本企業は無いに等しい。

ドイツのVWはIDシリーズ、フォードは北米でマスタングのEVシリーズを展開。韓国は現代自動車がIONIQシリーズを投入し、中国はNIOや40万円台の低価格EVで話題となった上汽通用五菱汽車など続々と新興企業が成長している。しかし、本来そこにいるはずのトヨタの名前がない。それはなぜなのだろうか。

EV化が世界の一大潮流になっているのに...

世界がEV競争へとこの数年向かっていた間、トヨタはどこに向かっていたのか。

結論から言えば、その答えは「水素」である。厳密には「ハイブリッドの後に水素」という構想があった。先日行われた決算報告でも、引き続きその戦略がトヨタの中核を形成していることが分かる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中