ワクチン接種率の差は国際通貨にも明暗 「最弱通貨」で円安圧力継続か
円は最弱通貨の一つ
円は対ドルで年初来約6%下落。クロス円でも円安が進んでおり、対英ポンドで約3年3カ月ぶり、対カナダドルで約3年4カ月ぶりの円安水準と、最も弱い主要通貨の一つとなっている。
その要因は、ワクチン接種の遅れによる経済正常化期待の低さだ。ロイターがまとめたデータによると日本では、1回目の接種を終えた人の割合は3%、2回目は1.1%にとどまっており、経済界からもワクチン普及の遅れを危惧(きぐ)する声が聞かれる。
楽天グループの三木谷浩史会長は13日の会見で、日本のワクチン普及の現状について「かなりの危機感を覚えている」と発言。特に手続きなどが極めて煩雑で複雑な点に関しては「若干フラストレーションがたまっている」と述べ、今後政府に協力する意向も示した。
政府は7日、東京都などに対する緊急事態宣言を延長。地方で変異株を含む感染が広がる中、14日には北海道・岡山県・広島県を新たに緊急事態宣言の対象地域に追加した。
日銀は国債買い入れを過去1年では若干増やしたが、2016年のイールドカーブ・コントロール(YCC)導入以降では減速させている。市場では「ステルステーパリング」ではないかとの指摘もあるが、景気や物価の回復の遅れから金融緩和の「出口」は遠いとみられており、10年債金利はゼロ%近傍での推移が続いている。
国際通貨研究所の上席研究員・橋本将司氏は、世界の景気サイクルと円は逆相関の関係にあり、コロナ禍からの回復局面である今は「円安になりやすい地合い」と分析。世界的にワクチンが普及して順調に景気回復に向かえば、「クロス円を中心に円安方向になるのではないか」との見方を示している。
(浜田寛子 取材協力:基太村真司 編集:伊賀大記、田中志保)
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