中国は新ビジネスのヒントの宝庫...中国人AI起業家が語る日本の「遅さ」、孫正義のすごさ
── これまでの人生で最も感銘を受けた本は何ですか?
『孫子』です。中でも兵法には、勝つための最速ルートを示す知恵が詰まっていて、実際のビジネスにも応用できますね。
一番印象深いのは、「以正合、以奇勝」という言葉です。「正攻法で戦いつつも、勝つための奇抜な方法を常に準備しておく」といった意味合いです。実際のビジネスでも、表に出ているのは一部であり、見えていない準備の部分が大事と考えています。どんどん種を蒔き、収穫の時期を待つというのが正しいやり方だと思っています。
こうした事前に入念な準備をする孫子の思想は、どちらかというと、中国人よりも日本人に合った考え方ではないでしょうか。
新訂 孫子
著者 金谷治(訳注)
出版社 岩波書店
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ソフトバンクの背中を追う
── 高成長が見込めるベンチャー企業は「ユニコーン」と呼ばれ、アメリカと中国に多く両国だけで約8割を占めると言われています。その点において日本はまだベンチャーが少ないとされますが、要因は何だと思われますか。
一番大きいのは失敗しにくい環境、失敗してはいけないというマインドでしょうね。二番目は投資を受けづらいこと、三番目は経営面でヒト・モノ・カネを動かすハードルが高いことだと思います。
中国のエンジェル投資の例では、「こういうことをやろうと思っている」と企画書1枚だけで会議のその日にすぐ話が進むことがありますが、日本はとても時間がかかりますね。
その観点では、起業家精神にあふれるソフトバンクの孫正義さんを大変尊敬しています。
── 今後の目標をお聞かせください。
大きな目標、野望と言ってもいいのですが、ソフトバンクを超える会社をつくりたいと考えています。華和結ホールディングスの傘下に、世界中の優れたAI(人工知能)技術を扱うAiBank(エーアイバンク)という会社があります。ソフトバンクが創業時にソフトウェアの卸売をしていたように、AiBankはその現代版として日本におけるAIの代理店になろうと頑張っています。
王 沁 (おう しん) 中国陝西省漢中市出身。2010年に来日し、慶應義塾大学商学部に入学。在学中にコンテンツ商社「JCCD.com」などを運営する華和結ホールディングスを設立。学業と起業を両立させる。
大学卒業後、同社を経営しながらリクルートホールディングスに入社。「じゃらん」など数多くメインブランドのCRM、企画運営、中華圏企業との提携交渉、投資検討などを経て、プロダクト統括本部・新規事業統括に配属される。
2021年にリクルートを退社。現在は、華和結ホールディングスCEOとして、「JCCD.com」の他、AI・人工知能プラットフォームの「AiBank.jp」、アプリ開発・運営の「NGA」など複数の事業を経営している。
flier編集部
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