バイデン政権提唱する法人税の国際最低税率 その内容と影響とは?
バイデン政権のイエレン米財務長官(写真)は4月5日、過去30年にわたる法人税率引き下げ競争に終止符を打つために、20カ国・地域(G20)に対し法人税に世界的な「最低税率」を設定することで合意するよう働きかけていると述べた。ホワイトハウスで3月撮影(2021年 ロイター/Tom Brenner)
イエレン米財務長官は5日、過去30年にわたる法人税率引き下げ競争に終止符を打つために、20カ国・地域(G20)に対し法人税に世界的な「最低税率」を設定することで合意するよう働きかけていると述べた。
構想の内容や企業・政府への影響をまとめた。
なぜ国際最低税率が必要なのか
一部の多国籍企業は、売上高が発生した地域にかかわらず、利益を低課税国・地域に移転しており、主要国はこうした流れに歯止めをかけ、税収の流出を阻止しようとしている。
特に医薬品の特許、ソフトウエア、知的財産権のロイヤルティーなど、無形資産から発生する所得は、低課税国・地域に移転され、相対的に税率が高い本国の課税を逃れる形になっている。
米国のバイデン政権は、最低税率について世界的に幅広い合意が形成されれば、そうした税源浸食が減るとともに、米国企業が財務的に不利な立場に立たされることなく、イノベーション、インフラなどの分野で競争できると期待している。
トランプ前政権は、租税回避地(タックスヘイブン)への税収の流出を回避するため、まず2017年に米国企業のオフショア子会社にミニマム税を課した。この「米国外軽課税無形資産所得(GILTI)合算課税」の税率は10.5%で、国内法人税率の半分にすぎない。
国際税制はどのような場で議論されるのか
経済協力開発機構(OECD)は、140カ国が参加する税制交渉で長年、調整役を務めている。主要課題は(1)国境を超えるデジタルサービスへの課税に関するルールの確立と(2)税源浸食の制限。国際最低税率の設定は、後者の問題に関連するものだ。
OECDと20カ国・地域(G20)は、この2つの問題について、年央までの総意形成を目指しているが、国際最低税率の設定は、技術的にそれほど複雑な問題ではなく、政治的な対立も少ない。
OECDは、この2つの課題について対策が施行されれば、企業の納める法人税が世界全体で500億ー800億ドル増えると推計しているが、増加分の大半は、国際最低税率の設定で実現できるとみられている。