最新記事

世界経済

バイデン政権提唱する法人税の国際最低税率 その内容と影響とは?

2021年4月8日(木)12時27分

国際最低税率はどのように運用するのか

各国が国際最低税率で合意した場合も、各国政府は引き続き自国の法人税率を自由に決めることが可能だ。ただ、企業が特定の国で納めた法人税の税率が低い場合、本国政府は国際最低税率に達するまで追徴課税を課すことができる。このため、利益を租税回避地に移転するメリットがなくなることになる。

バイデン政権は、最低税率に同意しない国に納められた税金について、控除を認めない方針を示している。

OECDは先月、ミニマム税の基本設計について、大まかな合意がすでに成立したことを明らかにしているが、税率については合意に至っていない。国際税制の専門家は、税率の設定が最大の難関だと指摘している。

その他、まだ議論が必要な課題には(1)投資ファンドや不動産投資信託(REIT)といった業界を対象に入れるのか(2)最低税率をいつから導入するのか(3)税源浸食の制限を目的とする2017年の米税制改革とどのように整合性を取るか――といった問題が残されている。

最低税率は何%になるのか

バイデン政権は国内の法人税率を28%に引き上げたい考えで、国際最低税率を現行のGILTI合算課税税率の2倍に相当する21%とすることを提唱している。また課税所得がどこで発生したかにかかわらず、すべての米国企業に最低税率を適用したい考えだ。

米国が提唱する最低税率は、OECDで以前議論された最低税率である12.5%を大幅に上回っている。12.5%はアイルランドの法人税率に等しい。

アイルランドは近年、海外の多国籍企業からの巨額投資で経済が好調に推移している。アイルランド政府は、税制ルールの調和で10年以上前から欧州連合(EU)と対立しており、12.5%を超える国際最低税率をすんなり受け入れる可能性は低い。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・「スタバやアマゾンはソーセージ屋台1軒より納税額が少ない」オーストリア首相が猛批判
・英米が大増税に舵を切る!?──コロナ対策で膨らんだ政府の借金をどう返すかの議論が始まった
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、来年は積極的なマクロ政策推進 習氏表明 25

ワールド

ロ、大統領公邸「攻撃」の映像公開 ウクライナのねつ

ビジネス

中国、来年は積極的なマクロ政策推進 習氏表明 25

ワールド

フィンランド、海底ケーブル損傷の疑いで貨物船拿捕 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中