最新記事

日本社会

コロナ禍で広がる「休肝日」 国内メーカーはノンアルコール飲料へシフト

2021年3月16日(火)13時00分

新型コロナウイルスのパンデミックによって、外で飲む機会もすっかり減った。神戸市に住む男性の公務員、Aさんはこれを機会にさまざまなブランドのノンアルコールビールを試してみたが、その味わいは、期待をはるかに上回った。9日、都内のスーパーで撮影(2021年 ロイター/Ritsuko Ando)

新型コロナウイルスのパンデミックによって、外で飲む機会もすっかり減った。神戸市に住む男性の公務員、Aさんはこれを機会にさまざまなブランドのノンアルコールビールを試してみた。

その味わいは、期待をはるかに上回った。普段はサッポロの黒ラベルが好きだというAさんは、ビールを止めたわけではないが、今後もノンアルコールビールを飲んで「休肝日を増やしたい」という。50歳を過ぎ、以前より健康に気をつかうようになったとも話す。

パンデミックが追い風となり、ノンアルコールビールに予想外のブームが生じている。アサヒグループ・ホールディングスでは、2020年は伸び悩んだノンアルコール・低アルコールビールの売上高が、今年は20%増と急伸すると予測。同社では、間もなく新製品「ビアリー」をデビューさせるが、ラインアップをさらに拡大する計画もある。

このカテゴリーで先行するのが、ライバルのキリン・ホールディングスだ。キリンは、ビールテイスト飲料の販売量について、2020年の10%増に続き、今年は23%と急増すると予想している。先日も、ノンアルコールビールの主力製品の1つを刷新したばかりだ。

もちろん、コロナの影響は健康志向の促進ばかりではない。自宅で過ごす時間が長くなったことで「とりあえずビール」の「お約束」から解放された人の中には、アルコール度数の高いカクテルを飲む人も増え、チューハイやカクテル、ハイボールなどのRTⅮ(ready to drink)の売上増大にもつながっている。

ノンアルコールビールにとって、プラス材料は他にもある。テレビその他のメディアで「ステイホーム」中の健康維持が叫ばれていたし、各社の幹部が言う「味の改善」のタイミングと偶然一致したこともある。これまでノンアルコールビールは、酵母臭が強い、味が薄い、あるいは人工的、などと評されることが多かった。

約3兆2760億円(300億ドル)規模のビール産業にとって、このノンアルコールビールのブームは刺激になっている。社会の高齢化やワインなど他のアルコール飲料の人気増大によって、ビール需要が後退しつつあったからだ。

実際、日本のビール消費量は過去20年間で半分以下に減少した。パンデミックにより、酒類を提供する飲食店が閉店時刻の繰り上げを余儀なくされたことも、この苦境に拍車を掛けた。

特に居酒屋向けの主力ブランド「スーパードライ」を中心とするアサヒのビール製品の場合、売上高は昨年16%低下した。アサヒより幅広いビール製品を提供しているキリンでも、販売量は5%低下した。

日本の人口の30%が生活する東京都を含めた首都圏では、今年宣言された2回めの緊急事態が3月21日まで継続している。

アンハイザー・ブッシュ・インベブとハイネケンが近年「バドワイザー」や「ステラ・アルトワ」といった知名度の高いラガービールのノンアルコール版を発売したことで、ノンアルコールビールは多くの国で入手しやすくなっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、ホンダとの統合協議を白紙に 取締役会が方針確

ワールド

「ガザ所有」のトランプ発言、国際社会が反発 中東の

ビジネス

EU、Temu・SHEINに販売責任 安価で危険な

ビジネス

独プラント・設備受注、昨年8%減 2年連続のマイナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 2
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 5
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 6
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 7
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 8
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 9
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 10
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中