コロナ禍で広がる「休肝日」 国内メーカーはノンアルコール飲料へシフト
新型コロナウイルスのパンデミックによって、外で飲む機会もすっかり減った。神戸市に住む男性の公務員、Aさんはこれを機会にさまざまなブランドのノンアルコールビールを試してみたが、その味わいは、期待をはるかに上回った。9日、都内のスーパーで撮影(2021年 ロイター/Ritsuko Ando)
新型コロナウイルスのパンデミックによって、外で飲む機会もすっかり減った。神戸市に住む男性の公務員、Aさんはこれを機会にさまざまなブランドのノンアルコールビールを試してみた。
その味わいは、期待をはるかに上回った。普段はサッポロの黒ラベルが好きだというAさんは、ビールを止めたわけではないが、今後もノンアルコールビールを飲んで「休肝日を増やしたい」という。50歳を過ぎ、以前より健康に気をつかうようになったとも話す。
パンデミックが追い風となり、ノンアルコールビールに予想外のブームが生じている。アサヒグループ・ホールディングスでは、2020年は伸び悩んだノンアルコール・低アルコールビールの売上高が、今年は20%増と急伸すると予測。同社では、間もなく新製品「ビアリー」をデビューさせるが、ラインアップをさらに拡大する計画もある。
このカテゴリーで先行するのが、ライバルのキリン・ホールディングスだ。キリンは、ビールテイスト飲料の販売量について、2020年の10%増に続き、今年は23%と急増すると予想している。先日も、ノンアルコールビールの主力製品の1つを刷新したばかりだ。
もちろん、コロナの影響は健康志向の促進ばかりではない。自宅で過ごす時間が長くなったことで「とりあえずビール」の「お約束」から解放された人の中には、アルコール度数の高いカクテルを飲む人も増え、チューハイやカクテル、ハイボールなどのRTⅮ(ready to drink)の売上増大にもつながっている。
ノンアルコールビールにとって、プラス材料は他にもある。テレビその他のメディアで「ステイホーム」中の健康維持が叫ばれていたし、各社の幹部が言う「味の改善」のタイミングと偶然一致したこともある。これまでノンアルコールビールは、酵母臭が強い、味が薄い、あるいは人工的、などと評されることが多かった。
約3兆2760億円(300億ドル)規模のビール産業にとって、このノンアルコールビールのブームは刺激になっている。社会の高齢化やワインなど他のアルコール飲料の人気増大によって、ビール需要が後退しつつあったからだ。
実際、日本のビール消費量は過去20年間で半分以下に減少した。パンデミックにより、酒類を提供する飲食店が閉店時刻の繰り上げを余儀なくされたことも、この苦境に拍車を掛けた。
特に居酒屋向けの主力ブランド「スーパードライ」を中心とするアサヒのビール製品の場合、売上高は昨年16%低下した。アサヒより幅広いビール製品を提供しているキリンでも、販売量は5%低下した。
日本の人口の30%が生活する東京都を含めた首都圏では、今年宣言された2回めの緊急事態が3月21日まで継続している。
アンハイザー・ブッシュ・インベブとハイネケンが近年「バドワイザー」や「ステラ・アルトワ」といった知名度の高いラガービールのノンアルコール版を発売したことで、ノンアルコールビールは多くの国で入手しやすくなっている。