韓国シネコン、生き残りかけた挑戦 ゲーマー向け貸切サービスからポップコーンのデリバリーまで
まさかのゲームプレイ専用映画館まで
さらに、劇場貸し出しの発展型として今注目を集めているのが「映画館の大画面でTVゲーム」サービスである。プレイステーションなどTV用ゲーム機とプレイしたいゲームを持ち込めば、誰でも大画面でゲームを楽しめる。
こちらは2時間4名基準10~15万ウォンとプライベート上映よりも高くなっているが、映画館の大画面と素晴らしいサウンドシステムでのプレイが、ゲーマーたちの心をとらえたようだ。なんとこの人気に乗ってロッテシネマでは、3月5日に大型LEDスクリーンを設置したゲームプレイ専用映画館「ゲームゾーン」をオープンすると発表した。
韓国の映画館といえば、プレミアム特殊館と呼ばれるアイデア館が有名である。前面だけでなく、左右の壁もスクリーンになっている「CGVスクリーンX」では、映画館ゲームの流行に乗って、昨年Eスポーツ世界選手権「LOL2020」決勝戦の生中継を行い話題となった。3面の大画面で繰り広げられる迫力たっぷりのゲーム中継は、韓国中からゲーマーたちから人気を博したという。大衆の足が遠のいた今、韓国の映画館はマニア層にターゲットを絞った戦略がとられている。
お笑い芸人が公演会場として活用
ほかにも、空いた劇場の利用法として注目を集めているのが「スタンダップコメディ・ショー」である。韓国にもお笑い専門の小劇場がいくつか点在するが、コロナの営業不振で潰れたり営業中止を余儀なくされたりしている。そこで行き場を失くした芸人たちが笑いを提供する場として映画館が選ばれた。
韓国では、コント系のお笑いが人気だが、ネットフリックスなどでスタンダップコメディが注目され、韓国人スタンダップ芸人も最近多く活躍している。映画館側も、スクリーン前のステージは演劇ができるほど広くもなければ設備もないが、マイク一つで勝負するスタンドアップコメディなら可能である。さらに、舞台挨拶などでトークショーのノウハウと、マイク設備も生かせるというわけだ。
さらに、コロナで海外旅行に行けなくなった今、日本でも「オンライン海外ツアー」が人気だそうだが、韓国でも「LAN線ツアー」と呼ばれ大好評である。2月末、これをなんと映画館の大画面で行うイベントが開催された。まず1回目のツアー目的地は香港で、実際に添乗員を務める人気ツアーガイドがマイクを握り、司会進行を務めたという。
スタンダップ芸人や、ツアーガイドなどこのコロナで仕事が減ってしまった人々と手を組み、空いた映画館を利用しながらお互いに盛り上げていこうという試みは、ぜひ今後も続けて欲しいイベントである。
コロナワクチンの接種が開始され、暗闇にかすかな光が見えてきたとはいうものの、長すぎたトンネルを抜け出て、全てが元に戻るにはまだ先は長い。エンターテイメントは、その中でも後回しにされがちな分野だ。だからといってネガティブにならず、これをチャンスに変えるべく、様々なアイデアを試し続ける韓国の姿にたくましさを感じる。どんな状況でも腐らずチャレンジを続けるこの精神が、世界中で躍進を続ける韓国映画業界の神髄なのかもしれない。