韓国シネコン、生き残りかけた挑戦 ゲーマー向け貸切サービスからポップコーンのデリバリーまで
映画館のスクリーンの前にはゲームのコントローラーをもった男性がひとり。韓国ではさまざまな形で映画館が生き残りを模索している。MBCNEWS / YouTube
<昨年、前年比2倍近い81館がクローズした韓国映画界。スクリーンの灯りを消さないための苦闘が続く>
新型コロナウイルスの世界的パンデミックが起こり、様々な業界が打撃を受けた。エンタメ業界では新作映画の公開延期が毎月のように報道されるなか、映画館の経営も厳しい状態に追い込まれている。
昨年は2月のアカデミー賞でポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が4冠を達成し、その存在を世界に見せつけた韓国映画界だったが、その後、コロナの影響で国内の映画館の経営状態は危機的状態だ。
韓国映画振興委員会が発表した「2021年1月の韓国映画産業決算資料」によると、今年1月の観客数は全国で179万人、売り上げは158億ウォンに留まった。これは、2004年に入場券の集計を始めて以来最低の観客動員だったという。
しかし、これまでコロナ対策でも様々なアイデアを駆使し、世界中をアッと言わせた韓国である。映画館もこの状況でただ指をくわえているだけではなかった。何とか営業を続けようとユニークなビジネスを実践している。
昔から「映画館の儲けは、チケット代ではなく館内の飲食代から出る」と言われてきた。1月中旬に開始が発表された「映画館メニュー出前サービス」の報道を見たとき、なるほどなぁと感心したものである。
韓国は元々出前大国だが、コロナ禍でさらにデリバリーサービスを利用する人が増加した。そして映画館へ行きたくても行きづらい状況が続き、ネットフリックス等配信系動画サービスの普及により家で映画を楽しむ人が増えた。家で映画鑑賞をする際、映画館の雰囲気を少しでも堪能したい人たちがこのサービスを利用しているようだ。
映画館で販売しているポップコーンや炭酸飲料はもちろん、イカのバター焼き、ホットドッグなど全てのメニューが注文でき、現在韓国3大シネコンのうちCGVとロッテシネマが実践している。両社ともに「今後デリバリーに特化したメニュー開発を行っていく」と発表していることから、どうやら好評なようである。
2人で貸し切り2880円!
韓国の映画館の生き残りをかけたアイデアはそれだけではない。新作上映作品がなく、観客が映画館に入らない状態で、空いた劇場の活用法も韓国的でユニークである。
まず、興行に陰りが見えだした去年の4月に始まったのが「映画館貸し切りプライベート上映」だ。CGV系列の中でも特に客足が芳しくなかった3館の14時、16時半、19時の回を2時間(映画1本)2人で3万ウォン(10名まで1人につき+1万ウォンで追加可能)という破格の料金設定で貸し出して話題となった。もちろんチケットはすぐに完売したという。その後、他の映画館でも同様の貸し出しサービスが行われている。
アメリカでも昨年10月頃から、一部の映画館で「プライベート上映」サービスを見かけるようになったが、こちらは人数制限がないものの平均して2時間100ドルと、なかなかの値段設定である。こう見ると韓国はかなり早い段階から思い切ったコロナ対応の営業に切り替えたように思う。