米民主党の追加経済対策で注目される「バイデントレード」の死角 株高・金利上昇シナリオは万全か
金融市場は米大統領選でのバイデン氏と議会選挙での民主党優位を織り込み、財政拡大観測による株高・金利上昇となっているが、いわゆる「バイデントレード」を疑問視する声も少なくない。写真はペンシルベニア州エリーで10日撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)
金融市場は米大統領選でのバイデン氏と議会選挙での民主党優位を織り込み、財政拡大観測による株高・金利上昇となっているが、いわゆる「バイデントレード」を疑問視する声も少なくない。富裕層や企業に対する増税は本質的に株安要因であるだけでなく、選挙の行方も最高裁裁判事の増員問題などで依然予断を許さないためだ。
トレード内容が変質
シナリオの中身が変わった。以前はトランプ氏勝利であれば株高・債券安、バイデン氏勝利なら株安・債券高という予想が主流であったが、ここにきてバイデン氏勝利でも株高・債券安(金利上昇)というシナリオがマーケットで広がっている。
シナリオを変化させたのは「トリプルブルー」による財政拡大観測だ。トリプルブルーとは、米大統領選で民主党のバイデン氏が勝利し、議会選挙でも上院・下院ともに民主党が制することを示す。ブルーは民主党のイメージカラーだ。
民主党の追加経済対策の規模は2.2兆ドル。一方、トランプ政権が提案する追加対策案は1.8兆ドル規模。バイデン氏は、2兆ドルのインフラ投資策なども掲げており「トランプ氏よりも景気刺激的になるのではないか」(外資系運用会社)との見方が強まっている。
しかし、そのシナリオはやや前のめり過ぎるとの指摘も少なくない。「トリプルブルーで本当に財政拡大となるかは不透明。そもそもバイデン氏や民主党が勝利するかもまだわからない。カネ余り相場の都合のいいシナリオだ」と、パインブリッジ・インベストメンツの債券運用部長、松川忠氏は指摘する。
脱トランプトレード
そもそも金利上昇は株価にとってマイナスであり、「バイデントレード」は矛盾をはらむ。景気拡大による「良い金利上昇」であればマイナス影響は限定的だが、財政拡大による国債増発を懸念した「悪い金利上昇」であれば、株価にネガティブに働く。
今回、パウエルFRB(連邦準備理事会)議長は積極的な財政政策による景気下支えを期待している[nL3N2GK3SX]。FRBが財政拡大に呼応し、国債買い入れを増やせば金利上昇は抑制される可能性が大きい。低金利は株高要因だが、米金利上昇や、それをもとにしたドル高/円安シナリオは崩れることになる。
一方でバイデン氏は、富裕層や企業に対する増税を打ち出している。株式価値の源泉は企業の利益であり、株の買い手としての富裕層への増税も、株価にとってはネガティブ要因。増税が先延ばしされても、将来の価値を織り込む株価にとってはマイナスだ。国債に頼らない財源として増税策を実施すれば、株高シナリオは揺らぐことになる。