依然回復鈍い中国の消費 低所得層「コロナ節約志向」顕著に
ガベカル・ドラゴノミクスのアナリスト、Wei He氏は「所得が比較的高い世帯は、恐らく貯蓄を増やした。なぜならロックダウン中は消費の縮小を強制されたからで、今は支出を拡大する態勢にある」と指摘。家計の正常化に「より長い道のり」をたどることになるのが低所得世帯だと説明した。
京東商城(JDドット・コム)のデータからは、6月に中小の都市や低所得層の消費の伸びが、主要都市と高所得層に比べて弱かったことが分かった。同社のフィンテック部門JDディジッツのチーフエコノミスト、Shen Jianguang氏は、これは普段とは逆の動きだと指摘する。多くの低所得労働者を雇っている中小企業が、コロナの影響をより大きく受けたからではないかというのが同氏の見方だ。
低所得層の苦境が中国の消費に及ぼす打撃は、相当大きくなる可能性がある。李克強首相は5月の演説で、月収が1000元程度しかない労働者は6億人前後存在すると明らかにしていた。6億人といえば全人口の4割を超える。
このため中央政府は、過去数カ月で雇用安定と家計支援に向けた幾つかの政策を打ち出し、例えば地方政府や企業は数十億元分の買い物券を配布している。
国内市場に軸足
もちろん世界全体で考えれば、中国の消費回復は不均等であるとはいえ、明るい部分であるのは確かだ。他の主要国は感染第2波と格闘中で、再び経済活動を制限する動きも出てきている。
これまで輸出に依存してきた中国の幅広いセクターは、外需の冷え込みを背景に、政府の熱烈な後押しを受けて国内市場に軸足を移した。
製造業のサプライヤーが直接、国内消費者に製品を販売するのを手助けするアリババのアプリは、3月の配信開始以降、120万社がサインアップしている。アリババの広報担当者は、その半分近くが元来は輸出専門企業だったと説明した。
江蘇省のある歯ブラシメーカーの幹部Tu Xinye氏の話では、今や受注総数の4割を国内が占め、以前の10%から急増した。それに伴って売上高もコロナ前の9割に回復したという。
だが、同氏は規模がより大きく、ライバルが乏しい「ブルーオーシャン」だった輸出市場と異なり、国内は競争がし烈だと述べ、新たな課題が浮上してきたとこぼした。
(Sophie Yu記者、Gabriel Crossley記者、Yawen Chen記者)
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