日本電産、日産系の変速機製造ジヤトコに触手 EV化時代にらみ激しい綱引き
2人の話し合いが進む中、日本電産は昨年11月、ジヤトコ買収を日産に打診した。事情を知る複数の関係者によると、日産経営陣はトラクションモーターという主要技術は自社で保有したいと考えており、回答は「ノー」だった。ロイターの問い合わせに対し、日産も日本電産もコメントを控えた。
関氏は年明けまでに日産を退社した。1月13日に新幹線で京都へ向かい、特別顧問として日本電産に入社、4月に社長に就任した。
関氏の最初の仕事の1つは、古巣から優秀な人材をさらに引き入れること、さらにはジヤトコの買収を成功させること。日本電産は2月、再び日産に接触した。
前出の複数の関係者によると、日産の回答はまた「ノー」だった。日産のアシュワニ・グプタCOOは関氏ら日本電産幹部に対し、トラクションモーターの次世代技術開発に向け提携していくことにしか関心がないと非公式に伝えたと、同関係者らは言う。
ジヤトコは「技術的な競争力の厳選の1つ」であり、日本電産に株式の過半数を握らせるつもりはないこと、どうしても現金が必要になればまずは保有するダイムラー株約1.5%を売却すること、競争力あるトラクションモーターを開発する提携以外の協議には応じないこと。グプタ氏はこうした話をしたという。
日本の月刊誌「FACTA」は6月、日産がジヤトコ売却を巡って日本電産と協議を進めていると報じた。日産はこれを否定している。
8月6日、日本電産の幹部2人が横浜市にある日産グローバル本社を訪問するのが目撃された。パワートレインと電気自動車の技術開発を統括する平井俊弘専務執行役員に会うためだ。関係者によると、平井氏はジヤトコを売却するつもりはない、日本電産とはトラクションモーターの提携についてしか話さないと繰り返したという。
日産のグプタCOOは8月19日、静岡県富士市にあるジヤトコ本社へ出向き、社員にメッセージを伝えた。グプタ氏は日本電産の社名は挙げずに、ジヤトコは「日産にとって重要な資産」であり、「パートナー」と考えていると語った。ジヤトコの広報はロイターに対し、グプタ氏の発言の要旨を認めた。
コストを大きく下回る販売価格
永守会長はトラクションモーターの将来性を確信しており、5000億円を投資して中国、メキシコ、ポーランドに工場を建設する考えだ。完成車メーカーへの販売価格はすでに1200─1300ドルまで引き下げている。平均製造コストは1800ドル程度と推定されており、これを大幅に下回ることになる。
トラクションモーターの売り上げは開示していないが、日本電産の発表によると、中国の広汽新能源汽車や広汽豊田汽車、吉利汽車などに供給している。吉利とダイムラーの合弁会社、中国の長城汽車と独BMWの合弁会社にも供給するとの噂があるが、日本電産はコメント控えた。販売価格についてもコメントしなかった。
(白水徳彦 取材協力:山崎牧子 日本語記事作成:久保信博 編集:石田仁志)
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