最新記事

コロナで世界に貢献した グッドカンパニー50

本気の社会貢献「グッドカンパニー」の時代が来た、コロナで何が変わったか

STEPPING UP

2020年9月23日(水)06時50分
サム・ヒル(経営評論家)、ハンク・ギルマン(本誌編集ディレクター)

ILLUSTRATION BY ANASTASIIA BORIAGINA/ISTOCK

<例えばクライスラーやアマゾンがいくらテレビCMを流しても、企業の善意は額面どおりには受け取れない。だが新型コロナ危機に際し、フィランソロピーが本格化し始めた。本誌は「グッドカンパニー50」特集を組み、世界と日本から特筆すべき企業50社を紹介する>

企業の善意は、額面どおりには受け取れない。例えばクライスラーのCMは新型コロナウイルス危機を一緒に乗り越えようと呼び掛けるが、その意味するところは「当社の車を買ってくれ」だ。当社の倉庫で働く人の安全は守られているとアマゾンのCMは強調するが、従業員中の感染者(そして死亡者)数はずいぶん前から伏せられている。

しかし、この未曽有の危機に際して本気で善意を見せ、独創的なフィランソロピー(企業の社会貢献)活動に取り組む企業もある。
20200929issue_cover200.jpg
もちろん、これには長い前史がある。昔の社会貢献活動は「もっぱら社長にオペラ観劇の特等席を用意するための手段だった」と言うのは、CECP(企業目的を重視する経営者たち)の代表を務めるダリル・ブリュースターだ。

しかし、ここ数年で状況は一変した。今は消費者も従業員も「もっと社会貢献を」と企業に求めている。そこへやって来たのが新型コロナウイルスの感染爆発だ。

米インディアナ大学のリリー家記念フィランソロピー大学院のドワイト・バーリンゲーム教授によれば、企業が「慈善事業に使う金は自分たちのためになると気付いたのは、ここ10年か15年のこと」だ。

そうした考え方は、今ではCSR(企業の社会的責任)と呼ばれている。企業が何を作り、何を売るかだけでなく、何を考えて活動しているかを問い直す。それがCSRの基本であり、そこでいや応なく注目されるのが企業戦略としてのフィランソロピーということになる。

ブリュースターによれば、アメリカ企業による慈善事業への寄付は年間260億ドルに上る。それでも純利益の1%弱(寄付金額上位25%の企業では2%弱)にすぎず、何かを変えるにはまだ少な過ぎるという指摘もある。『正しい寄付(Giving Done Right)』の著者フィル・ブキャナンも「株主への利益還元が善意に勝つ」現状では企業の社会貢献も「うわべだけ」だと批判する。

magSR200923_GoodCompany2.jpg

困窮するレストランと人々を結ぶ団体ワールド・セントラル・キッチン HILTON& AMEX

そうは言っても、経営者には株主への責任がある。会社の利益を最優先するのは経営者の法的義務だ。本来なら株主に還元すべき利益を別な目的に投じるのなら、それがいかにして会社の評判を上げ、顧客や就職志望者、さらには地域社会での評価を高めるかをきちんと株主に説明できなければならない。

だからたいていの会社は、自社の事業と関連のある分野に寄付金を出す。電機大手のシーメンスなら理工系の教育向上に資金を出すし、軍人向けの保険を扱うUSAAなら退役軍人の団体に寄付をする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 買春疑惑で

ワールド

ウクライナ戦争「世界的な紛争」に、ロシア反撃の用意

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中