最新記事

ポストコロナを生き抜く 日本への提言

コロナ後に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」再来の希望

JAPAN AS NUMBER ONE, AGAIN?

2020年5月8日(金)17時20分
にしゃんた(羽衣国際大学教授、タレント)

私は、論文作成のためにいくつかの国の日系企業をリサーチしたことがある。品質管理のための自発的グループ活動であるQCサークルや5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)などの慣行が日系企業に限らず、非日系企業さらには学校などでも取り入れられ、「日本的経営」は世界の老若男女の合言葉となった。もとは「特殊で劣っている」と世界からレッテルを貼られていた経営方式が、1980年代頃から手のひらを返したように「普遍的で優れている」と称賛されるようになり、日本は長年の鬱憤を晴らした格好だった。

だが、あれから四半世紀を経て日本的経営のイメージは随分と変わった。ブラック企業、過労死、非正規雇用、ワーキングプア、パワハラ、従業員軽視など不評ばかりが聞こえてくる。私など「人を大切にする経営」に心酔して高校時代に来日し、一貫してそのテーマで学び続けて博士号を取得してその余韻のまま日本国籍を選んだ者にとって、今の状況はそれこそ本当に狐につままれたような気分だ。

今年に入ってからの突然のコロナショックがいずれ落ち着いてくると、日本企業では外国人労働者と共に働く体制が本格化するに違いない。ただ、経済が膨張するなかで人手不足を補うために日系人を受け入れた30年前と、日本経済が縮小しアジア諸国の経済が上向いているなかでの外国人労働者の受け入れは、同じようにはいかない。外国人労働者は日本の経営、さらには日本社会全体を映し出す鏡となる。右肩上がりの経済成長期でなくとも、人を大切にする日本的経営は永遠に不滅であるということを国内外に証明していく必要があろう。

多様性と包摂をキーワードに

かつて海外に生産拠点を置く日系企業の現地化のための、人材育成の一環として重宝された「技能実習制度」。それが今となっては低賃金労働力確保の変則技として日本社会に定着している点一つ見ても、楽観視はできない。実習生の過労死や自殺者を出すなど非人間的な制度運用が明るみになって「現代の奴隷制度」と悪評を浴びせられ、状況を無視できなくなった結果、登場したのが外国人を正面玄関から迎え入れるための入管法改正である。

それなのに、日本人労働者と同等の処遇をうたう特定技能1号と2号を盛り込んだ法律の施行から1年たっても、受け入れ目標は思うように達成できていない。原因は2つあり、具体的な体制が整わないまま法律が先走りしたことと、特に賃金において日本人と同等の条件で受け入れができる企業は限られるということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中