「危機に強い金相場」、コロナショックでも通用するか
昔から「金は危機を愛する」という相場の格言がある。写真は16日、バンコクの店頭で取引される金(2020年 ロイター/Jorge Silva)
昔から「金は危機を愛する」という相場の格言がある。投資家が資金の逃避先を求める中、今年の金相場は年初来で13%上昇し2012年以来の高値を付けた。一段の上昇を見込む声も多い。格言はこれまでのところ、新型コロナウイルス危機でも通用するように見える。
もっとも個人も政府も収入の落ち込みを目の当たりにしている。伝統的に金の買い手であるインドや中国の消費者は購入を減らし、各国の中央銀行も金購入を削減している。こうした需要がなければ、金の一段の上昇を維持するのは難しいかもしれない。
金は経済混乱、資産や通貨の価値減少の可能性を懸念する投資家から安全目的の買いを集めている。2011年に価格が1オンス=2000ドル目前の過去最高値を付けたのと似た強気相場を予想する投資家もいる。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、年末までに3000ドルを付けるかもしれないとさえ予想する。
しかし、過去の値動きが何らかの参考になるとすれば、金が本格的にさらに上昇するには一定期間、需要増加が続くことが必要なのだ。
モルガン・スタンレーの首席クロスアセットストラテジスト、アンドルー・シーツ氏によると、インフレが金を押し上げるとか、政情不安などで金が上がるといったことをよく聞くが、値動きはそれほど簡単ではないという。
流れに乗れ
過去50年で金のめざましい強気相場は2回あった。
最初の急騰は1970年ごろ、世界で金本位制が崩れ、金の個人保有規制が緩和された局面だ。コーク大学のファーガル・オコナー氏によると、たまっていた金需要の拡大が解き放たれた。政情不安や経済混乱、投機ブームを背景に、35ドルだった金は80年には800ドル近辺に上昇した。
これが天井を付けると、20年にわたる相場低迷期を迎える。各中銀が大量売却に動いたのがきっかけだった。1999年には一時、250ドルまで下がった。
そこで潮目が変わる。市場構造が変わったのだ。欧州の各中銀は金売却の協調で合意し、相場は安定した。中国も個人の金保有規制を緩和し、市場での金購入は急増した。金を原資産とする上場投資信託(ETF)も登場、個人が金に投資するのを容易にした。
ワールド・ゴールド・カウンシルによると、金の年間需要は2003年から11年にかけて、約2600トンから同4700トン超に拡大した。
この相場上昇は、高値を嫌った需要減退で終わる。その後は昨年まで、金価格低迷が続いた。しかし、各中銀の利下げが相次ぐにつれて、債券利回りの低下とともに、利息を生まないはずの金投資の魅力が再び増すことになった。
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