コロナ禍での「資産運用」に役立つ行動経済学(3つのアドバイス)
個人投資家におすすめなのは「市場にお任せ」の運用
ビジネス専門のケーブルテレビCNBCで視聴者に有望銘柄を教えているジム・クレーマーのような人は、株の売買でさぞかし稼いでいると思われるだろうが、実績は必ずしも振るわない。
クレーマーが選んだ銘柄で運用し、運用益を慈善活動に寄付する投資信託「アクション・アラーツ・ポートフォリオ」の実績は過去10年ほどスタンダード&プアーズ(S&P)500種株価指数の上昇率を下回っている。専門家が選んだ銘柄を買うより、ETF(株価指数連動型上場投資信託)を購入するほうがいい。
銘柄選びはなかなか難しい。アルファ値、つまり市場平均よりも高いリターンを得られるかどうかはゼロサムゲームだ。市場では得をする人がいれば、必ず損をする人がいる。とはいえ、市場にはアノマリーがあり、機関投資家は組織的にそれを利用して高いリターンを稼ぐ。ただ個人投資家が繰り返しその手法を使うのは難しく、ETFなど指数連動型ファンドのほうが無難だろう。
今は市場のアノマリーも織り込んだ「スマートベータ」型運用を行う投資ファンドが多くある。もしもあなたが市場全体の値動きと同レベルの収益を目指す「パッシブ運用」では飽き足らず、リスクはあるが将来的に高いリターンを狙える「アクティブ運用」に興味があるなら、このタイプのファンドがおすすめだ。
月の末日の数日前は債券投資の意外な穴場
コロナ禍で経済の先行きが不透明な今、資産の一部を債券など比較的安全な投資先に移したいなら、月末の少し前に購入するといい。私の研究では、債券価格は構造的に月の末日に上がる傾向がある。これはブルームバーグ・バークレイズ総合型債券指数など、複数の銘柄を集約したインデックスの再調整に伴う現象で、債券ファンドマネジャーはそれに合わせて月末に銘柄の再構成をするため特定の債券を買う。
個人投資家がこの動きを利用して稼ぐには、末日の数日前に債券を買い、(短期の利益が欲しいなら)末日に売ればいい。こうした取引はウォール街で「月末」売買と呼ばれ、債券市場(隔月でインデックスの再調整が行われる)ではよくあるアノマリーだ。この現象は名目債、物価連動債を問わず、米国債でも日本国債でも見られる。
<2020年6月2日号「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集より>
※この記事は「消費者が思うより物価は高い(コロナ不況から家計を守る経済学)」に続きます。
2020年6月2日号(5月25日発売)は「コロナ不況に勝つ 最新ミクロ経済学」特集。行動経済学、オークション、ゲーム理論、ダイナミック・プライシング......生活と資産を守る経済学。不況、品不足、雇用不安はこう乗り切れ。