国内生保、国債投資を敬遠 「ポストコロナ」にらみ運用を多様化へ
国内主要生保の2020年度一般勘定資産運用計画が出そろった。世界的な金利低下が進む中、国債への投資には国内、海外ともに慎重な姿勢をみせているのが特徴だ。2013年5月29日、日銀本店外で撮影(2020年 ロイター/Yuya Shino)
国内主要生保の2020年度一般勘定資産運用計画が出そろった。世界的な金利低下が進む中、国債への投資には国内、海外ともに慎重な姿勢をみせているのが特徴だ。新型コロナウイルスの感染拡大が終息したとしても、金利が急上昇するとの予想は少ない。社債やプロジェクトファイナンス、海外ファンドに投資するオルタナティブなど、各社とも投資先を多様化させて運用難の環境を乗り切ろうとしている。
日本国債の低い「魅力」
日本国債に対しては依然慎重な生保が多い。主な投資対象となる超長期債の利回りが24日時点で新発20年債で0.3%台、新発30年債で0.4%台と相変わらず低いためだ。理想は30年債で1.0%、0.8%でも買いに動く可能性があるが、いずれにせよまだ距離がある。
標準利率の低下にともなって、徐々に低い金利でも負債をカバーできるようになってきているものの、2017年3月以前の標準利率1%時代の負債(保険契約)が依然として大部分を占める。ALM(資産と負債の総合管理)上、一定程度の超長期債は買い入れるものの、積極的な買いには至らないとの運用計画が今年も多い。
日本生命は今年度の新規資金1.5兆円程度のうち円建て債券に1兆円を配分するが、中心は通貨スワップを使って円金利化させた外国社債だ。国債も増加させるが、1兆円の半分以下になる見込み。「日本国債への投資は全体の負債規模からみればわずか。現状の金利水準では本格的な投資に向かう状況ではない」(執行役員財務企画部長の岡本慎一氏)という。
コロナの終息が見えたとしても、金利が大きく上昇するとの見方は少ない。富国生命の財務企画部長、小野寺勇介氏は「世界的な金融緩和により資金が潤沢であることに変わりはない。世界中で運用難が続いている中、金利が跳ね上がる局面があれば、投資資金が入ってくる」と話す。
外国債も「八方塞がり」
国債への投資は外債でも厳しい。為替変動リスクを除くための為替ヘッジを付けると、依然として十分な利回りを得られないためだ。
ドル/円の需給を表すベーシスはプラスに転じ、この部分にだけ関して言えば、国内勢は上乗せ金利を得られるようになった。しかし、依然として日米の金利差が開いており、その分(LIBOR分)を円をドルに換える際には払わないとならない。
日米金利差は24日時点で約1%。ベーシスはプラス0.1%程度なので、3カ月分のヘッジコストは約0.9%になる。一方、米10年債利回りは約0.6%。ヘッジをかけると0.3%のマイナス金利となってしまう。
一方、欧州債投資の魅力も低い。ヘッジコストでいえば、国内勢は上乗せ金利をもらえるが0.2%程度。24日時点の10年債利回りでみて、ドイツはマイナス0.47%、一時国内勢に人気のあったフランスも0.024%にすぎず、投資しても満足な金利を得られない。イタリアやスペインは利回りは高いがリスクが大きい。新興国も同様だ。
欧州債への投資について、明治安田生命の運用企画部長、中野康一氏は「コロナの感染や経済への影響を見極めながら慎重に判断したい」と話す。