最新記事

通信

新型コロナウイルスによるテレワークに巣ごもりでネット利用急増 なのに通信株低迷の不思議

2020年4月19日(日)18時00分

新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的なロックダウン(都市封鎖)でインターネット利用が拡大し、ゲームや食事デリバリーといった企業のオンライン販売が増える中、通信株の株価はネットサービスを利用している企業をアンダーパフォームしている。写真は10日、ポーランドのカトリック教会でオンライン中継された聖金曜日の式典(2020年 ロイター/Kacper Pempel)

新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的なロックダウン(都市封鎖)でインターネット利用が拡大し、ゲームや食事デリバリーといった企業のオンライン販売が増える中、通信株の株価はネットサービスを利用している企業をアンダーパフォームしている。アジア、アフリカ、欧州、南北アメリカでの高水準の固定費や債務に市場混乱が加わったためだ。

アムンディ・アセット・マネジメントの株式部門責任者、カスパー・エルムグリーン氏は「ややサプライズだ。伝統的なディフェンシブ銘柄は役割をこなしているが、通信株はあまりディフェンシブではない」と指摘。欧州市場全般にほぼ沿って株価が下落していると説明した。

世界的にみると、MSCI世界通信サービス株<.MIWO0TS00PUS>は13%安となっており、下落率はヘルスケア株<.MIWO0HC00GUS>(6%)、テクノロジー株<.MIWO0IT00PUS>(8%)、生活必需品株<.MIWD0CS00PUS>(10%)よりも大きい。

通信事業者のサービスがこれまでになく重要になっているが、株価は各社が直面する困難な環境を示している。

世界中で何百万人の人々が自宅に閉じ込められ、企業は閉鎖されている。このため事業やエンタテインメントはオンラインで行われ、通信各社は高まる需要に対応するため支出を強いられており、固定的な価格構造の中、こうした投資がすぐさま収益につながるわけではない。

また、旅行需要が減る中でローミング関連収入が干上がっているほか、通信各社は企業閉鎖に伴う失業拡大を受けた新規契約の不振も見込んでいる。

独通信会社1&1ドリリッシュのラルフ・ドマーマス最高経営責任者(CEO)はロイターに対し「在宅勤務時間の拡大が今後の収入減を補うかどうかはまだ何とも言えない」と述べた。

コロナ危機があぶりだしたトレンド

AT&Tは今年に入ってから21%値を下げているほか、テレフォニカは30%下落。世界2位のモバイルオペレーターであるボーダフォン・グループは先月、データ通信量が50%拡大したと発表。ただ、株価は23%安となっており、ベンチマーク指数と同じ下げ幅となっている。

GFMアセットマネジメント(香港)のマネジングディレクター、タリク・デニソン氏は「(通信会社は)第5世代(5G)向け設備投資があるだけでなく、債務支払いもある。そのため、キャッシュフローが落ち込めば、(株主ではなく)債券保有者を優先しなければならない」と語る。

通信株はディフェンシブの特性を失っているわけではない。MSCI世界通信サービス株の13%安は市場全体の下落率(16%)に比べればましだ。

今回の下げで割安感が出ており、デニソン氏は安定した利益があり、債務も少ない中国移動株を買い入れたという。

一方で、ネットフリックスやアマゾン・ドット・コムといった通信インフラを利用する企業がアウトパフォームしており、ネットワークオペレーターを置き去りにしている。

ブリスベン在住の独立系通信アナリスト、ポール・ブッデ氏は「こうしたトレンドは新型コロナ危機後に強まると思う」と述べた。


【関連記事】
・新型コロナウイルス、モノの表面にはどのくらい残り続ける?
・中国・武漢市、新型コロナウイルス死者数を大幅修正 50%増の3869人へ
・イタリア、新型コロナウイルス新規感染者は鈍化 死者なお高水準
・新型コロナウイルスをめぐる各国の最新状況まとめ(17日現在)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メキシコ大統領、他国籍の米移民希望者受け入れには同

ワールド

イスラエル、ガザの平和的再建目指す 復興支援は未定

ワールド

米軍、メキシコ国境に兵士1500人の追加派遣を準備

ワールド

トランプ氏、ロシアに高関税・制裁警告 ウクライナ合
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 4
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    【クイズ】長すぎる英単語「Antidisestablishmentari…
  • 8
    トランプ就任で「USスチール買収」はどう動くか...「…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中