イタリア、企業はもう体力の限界 高まる新型コロナウイルス「都市封鎖」解除の圧力
企業が政府に圧力
大半の企業は、公衆衛生の観点からロックダウンの必要性を認めている。ウイルスの拡大が沈静化する前に制限措置が解除されたとしても、人々が家を出て経済活動に従事しようという自信を持てなくても無理はない。
世界保健機構(WHO)は7日、制限措置の解除を焦らないよう各国に呼びかけた。
イタリアをはじめとする各国で多くの人が懸念しているのは、科学的な知見が週を追うごとに変化している中で、どのようにして安全に制限措置を緩和するかという、確固たるプランが自分たちの政府にないように見えることだ。
ユーロ圏第3位の経済大国であるイタリアでは、企業各社が政府に対し、ロックダウン措置の段階的な緩和計画をまとめるよう迫っている。
ビチェンツァで電子機器・電子部品、ソフトウエアを製造するセルテック・エレットロニカ社の創業者ステファノ・ルアロさんは「政府が安全性について厳格なルールを設定した上で、我々が業務を再開できる可能性を示してほしい」と話す。
政府はこれまでのところ、企業活動に対する制限は、地域単位ではなく、セクターごとに解除されていくことになるのではないかとしている。
工場閉鎖で計り知れないダメージ
ビチェンツァもパドゥアも、ベネト州にある。ここはロンバルディア州、エミリアロマーニャ州と並び、イタリア国内で最も新型コロナの打撃を受けた地域だ。工場が集中し、中国との経済的なつながりが深いことが、感染が広がった理由として指摘されている。
エミリアロマーニャ州ピアチェンツァの高級ヨットメーカー、アブソリュート社の副社長チェーザレ・マストロヤンニさんは、「当局に対して『急いでくれ』と声を大にして叫んでいる」と話す。「工場閉鎖によって、すでに計り知れないダメージが生じている」と訴える。
だが労働組合は、必要不可欠なものを除いた企業活動の停止を政府が維持しなければ、ストライキに踏み切るとしている。「カネよりも命を守れ」というのが、彼らの主張だ。
多くの企業が工場再開に向けた計画を政府に求めているものの、従業員をリスクにさらすつもりはない。
従業員100人の自動車用エアフィルターメーカーの創業者ガエタノ・ベルガミさんは、多くの受注を抱えつつも従業員が感染するリスクを恐れ、「操業を再開するわけにはいかない」と話す。「再開するのは、管轄当局が可能と判断してからだ」
一方、中道派与党の「イタリア・ビーバ」を率いるマッテオ・レンツィ元首相は、ローマカトリック教会の新聞「ラベニーレ」に対し、「何もかもが片付くまで待ってはいられない。企業閉鎖を続ければ国民は飢えてしまう」と語った。
財界団体のコンフィンドゥストリアは、今年のイタリア経済の成長率をマイナス6%と予想。累積公的債務は国内総生産(GDP)比150%に急増するとみている。何千人もの国民が国の所得支援に申請する中で、詳細な回復の道筋をまとめるようコンテ首相への圧力が高まっている。