テレワークに落とし穴 金融相場変動を助長、銀行や証券がリスク取れず
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相場が一方向に振れやすくなっている要因の1つに、金融関係者の在宅勤務が挙げられている。都内で3月撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)
相場が一方向に振れやすくなっている要因の1つに、金融関係者の在宅勤務が挙げられている。職場に比べ作業効率が低下する仕事環境の中で、リスクが取りにくくなっており、順張りファンドなどの売買を受け止めきれないという。都市封鎖で流動性がさらに低下すれば、円高要因になるとの指摘も出ている。
かなり不便
自宅で取引を行おうと思っても、実際上は、パソコンの通信速度が遅かったり、複数のモニターが同時に見られず、売買の判断が遅くなったりするとの声が、複数の市場参加者から出ている。
「コンプライアンス上、会社のデータを自分のパソコンにダウンロードできないので、必要な分だけ同僚にメールで送ってもらっている」(国内銀行)といった、作業上の細かな「面倒」もトレーダーたちの手足を縛っているようだ。
「オフィスで隣に座っている人との会話や、雰囲気もトレードの重要な判断材料だ。それが分からないとリスクが取りにくくなる」と、三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏は指摘する。孤独感の中で、リスクを取る勇気を奮い立たせるのは容易ではない。
3月23日に書面で開催された、国債市場特別参加者会合(第85回)では、「オフィス分離や在宅勤務などが進んだため、オペレーショナル・リスクが以前に増して大きくなっている」との意見が出た。売買の執行にリスクがあれば、現場としては、トレードには慎重にならざるを得ない。
31日に実施された2年債入札が低調だった要因の1つにも、市場関係者の在宅勤務があったとの見方が多い。「2年債のメインプレーヤーは銀行。金利水準が上昇していたにもかかわらず、消極的な応札となったのは、年度末ということもあるが、在宅勤務でリスクがとれなくなっているからではないか」(国内証券)という。