最新記事

米国株

米株、新型コロナウイルスと原油急落で514兆円が消える

2020年3月10日(火)16時44分

新型コロナウイルスの急速な感染拡大とその世界経済への影響を巡る懸念は、9日の原油価格急落と相まって、ここ数週間でS&P総合500種指数の時価総額を5兆ドル超吹き飛ばした。ニューヨーク証券取引所のフロアで9日撮影。(2020年 ロイター/Bryan R Smith)

新型コロナウイルスの急速な感染拡大とその世界経済への影響を巡る懸念は、9日の原油価格急落と相まって、ここ数週間でS&P総合500種指数の時価総額を5兆ドル超吹き飛ばした。

9日の同指数は7.6%安。原油相場の大幅な値下がりや新型ウイルス感染拡大を巡る懸念からリセッション(景気後退)懸念が台頭し、パニック売りに見舞われた。

インディペンデント・アドバイザーズ・アライアンスのクリス・ザッカレッリ最高投資責任者(CIO)は「破滅的な状況だ。新型ウイルスが米国でどれほど感染拡大するのか非常に不透明だ。さらに原油安もある」と指摘。3つ目の懸念として利回りが急速かつ大幅に低下する中での金融の不安定性を挙げた。

ニューヨーク証券取引所では9日、52週ぶりの安値を付けた銘柄数が3500を超え、2008年以来で最多の新安値銘柄数となった。

S&P500は過去最高値を付けて以降、時価総額が5兆ドル超消失。指数を構成する銘柄のうち、時価総額上位10社を合わせた消失総額は1兆4000億ドルを上回っている。

マイクロソフトは2月19日以降で約2500億ドルの時価総額を失っており、米国企業で最大の消失額となった。アップルとアルファベットの消失額はいずれも2000億ドル超。アマゾンは時価総額を1700億ドル失った。

原油安を背景に9日のS&P500エネルギー株指数は20%下落し、2004年8月以来の安値を付けた。

同指数は52週高値から50%値を下げており、セクター別で最大の下げとなっている。米10年債利回りが9日に過去最低まで低下する中、S&P500金融株指数は11%下落し、先月付けた過去最高値から27%値を下げた。

ニューブリッジ・セキュリティーズ(ニューヨーク)の首席マーケティングストラテジスト、ドナルド・セルキン氏は「原油安は石油株、石油業界、シェール生産業者に大打撃となり、過去最低の金利は銀行に多大な影響を与えるだろう。これらの株式がきょう(9日)最も値を下げた」と述べた。

米国株式市場の急落はまた、昨年に待ち望まれた上場を果たした企業の株式にも打撃となっている。ペロトン・インタラクティブとウーバー・テクノロジーズといった銘柄はさらに値を下げる一方、ビヨンド・ミートなど、投資家に好まれている銘柄は上場来の上げ幅を縮小している。

[サンフランシスコ ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【関連記事】
・WHO「新型コロナウイルス、パンデミックの脅威に現実味 なお制御可能」
・スペイン、新型コロナウイルス感染者999人に急増 政府が近く支援策発表へ
・韓国、8日の新型コロナウイルス感染は過去10日で最低に 文在寅「安定局面に入る可能性」


20200317issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月17日号(3月10日発売)は「感染症 vs 人類」特集。ペスト、スペイン風邪、エボラ出血熱......。「見えない敵」との戦いの歴史に学ぶ新型コロナウイルスへの対処法。世界は、日本は、いま何をすべきか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中