中国工場停止に続きベトナムから渡航制限 韓国企業に「ウイルスドミノ」続く
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米アップルと韓国LG電子向けにスマートフォンの部品を製造する韓国のある多国籍企業に対し、新型コロナウイルスの感染拡大が波状攻撃のように襲っている。写真はベトナムのハイフォンの港で2018年9月撮影(2020年 ロイター/Kham)
米アップルと韓国LG電子向けにスマートフォンの部品を製造する韓国のある多国籍企業に対し、新型コロナウイルスの感染拡大が波状攻撃のように襲っている。
中国で最初に感染が広がった時、この企業の中国工場は約3週間の閉鎖を迫られ、同社ベトナム工場への供給が途絶え始めた。続いて感染が韓国に及び、渡航制限が実施されると、韓国人従業員はベトナムの港湾都市・ハイフォンの工場で予定していた設備拡張の作業を阻まれた。
同社の工場は、韓国で感染が集中している大邱市から車で1時間の亀尾市にある。今や、この工場で生産に支障が生じている。中国からの資材・部品調達に問題を抱え続ける一方で、国内でも一部従業員が隔離の対象となったのだ。最終顧客のアップルなどにも問題は波及しそうだ。
「ウイルスがサプライヤー企業にドミノ現象を及ぼしている。天を仰いでため息をつくしかない」──。同社の上級幹部はロイターの取材に対し、こう述べた。
同社の苦境は、新型ウイルス危機がいかにアジアの電子機器のサプライチェーンを揺さぶっているかを物語っている。ベトナムに重点投資する韓国企業の戦略が、中国リスクの回避策として万全ではなかったことも明白になった。
LG電子とサムスン電子を筆頭に、韓国企業は何年もかけてベトナムで製造基盤を築いてきた。中国で政治リスクと製造コストが高まったほか、知的財産権侵害への懸念もあるからだ。
中国は今も多くの部品や資材で最善の供給元であり、中国の大手ハイテク企業やアップルの生産拠点でもある。それにもかかわらず、隣接しているベトナムがリスク減殺のための場所に選ばれるのは自然の成り行きだった。
韓国企業は外国企業の中で最も対ベトナム投資が盛んで、4000社以上が進出している。両国の相互依存は深まっており、サムスン電子だけでもベトナムの輸出の4分の1を占める。韓国にとってベトナムは3番目の輸出市場であると同時に、輸入先としても5番目に位置する。
両国間のビジネスを円滑にしているのが、頻繁な人の行き来だ。2018年に韓国からベトナムを訪れた人数は約350万人と、前年比44%も増えた。韓国とベトナムの航空会社が運航する両国間ルートの便数は昨年、1週間当たり538便に及んだ。
このため、ベトナムが渡航を制限し始めると事業計画が支障を来した。両国間の航空便は現在、大半が運航を停止しており、8日からはベトナムに入国する韓国人に14日間の隔離が義務付けられる。