最新記事

通信

楽天携帯事業、通信業界は醒めた視線 「音声通話無料」の破壊力はユーザーに届くか?

2020年3月6日(金)19時06分

楽天は3日、自社エリア内のデータ通信を上限なしとする低価格の携帯電話料金プランを打ち出した。写真は都内の楽天本社で、2019年5月撮影(2020年 ロイター/Sam Nussey)

楽天は3日、自社エリア内のデータ通信を上限なしとする低価格の携帯電話料金プランを打ち出した。自社エリア外では制限がかかる内容に、プラン次第でユーザーを奪われると警戒していた通信業界からは「肩透かし」との声も聞かれる。一方、独自のアプリを通じた国内通話かけ放題という仕組みは、既存の音声通話サービスに置き換わる潜在力があるとして、通話面から通信料金の「破壊」が起きるとの見方も浮上している。

通信業界、冷静な受け止め

「ソフトバンクにはすでに23万の基地局がある」──。ソフトバンクの榛葉淳副社長執行役員兼COOは5日、次世代通信網「5G」のサービス発表の会見で、自社の優位性を強調し、ネットワーク整備の途上にある楽天をけん制した。楽天は今年3月末に基地局4400局を整備する見込みで、26年3月までに2万7400局を計画している。

楽天の料金プランは月額2980円。自社エリア内のデータ通信を無制限とし、大手通信各社のデータ大容量プランの半額以下という低価格を打ち出した。先着300万人には1年間の料金無料とするキャンペーンも実施する。

ただ、通信業界では、冷静な受け止めが多い。「ストレスフリーな環境に慣れたユーザーは、それほどなびかないのではないか」(大手通信関係者)との見方だ。

携帯電話のユーザー獲得競争では、データ通信が主戦場になる。高速大容量が特徴の5G商用化をにらみ、各社は音楽や映像といったデータの大きいコンテンツの拡充を進めている。データの通信量は増えていく方向だ。

楽天のプランはエリア外では2GBの上限が設けられ、上限に達すれば速度が大きく低下する。集中的に基地局を整備した都心部でも、地下などまだ電波が十分に届かないところは少なくない。とりわけヘビーユーザーは、気づかないうちエリア外になって上限に達してしまう事態も想定される。

「東名阪でも、地下鉄で動画をよく見る人には月2GBでは物足りないのではないか」とMM総研の横田英明研究部長は指摘する。

受け入れやすいライト層

もっとも、関心を寄せる消費者は多いようだ。楽天の会見中に料金プランの加入受付を開始したところ「想定を上回るアクセスで、(申し込み)ページが重くなっている」と、楽天モバイルの山田善久社長はアピールした。

楽天は、2028年度までに1000万回線の獲得を計画する。インターネット通販サイト「楽天市場」を中心にグループ利用者のIDは1億超あり「モバイルに誘引すれば計画の達成は不可能ではない」(楽天関係者)との見立てだ。

携帯ユーザーの中には、楽天がエリア外の上限と設定した2GBも容量を必要としていない人も多い。総務省が昨年8月に発表した2018年度利用者アンケートでは、大手通信会社のユーザーの1カ月当たりのデータ通信量は2GB未満が約6割と、過半を占めた。

金融市場では、楽天のプランは、MVNO(仮想移動体通信事業者)ユーザーのほか、大手通信会社のデータ通信1GB─3GBに通話無制限を加えた料金に比べても安いとして「大手通信会社のライトユーザーも関心を持つのではないか」(証券アナリスト)との見方が出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

伊銀行2位ウニクレディト、3位BPMに買収提案 約

ワールド

印マハラシュトラ州議会選、モディ首相の連合が勝利へ

ビジネス

ECB金融政策、制約的状態長く維持すべきでない=レ

ビジネス

日経平均は続伸、米経済の底堅さ支え 米財務長官人事
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中