ドル/円高値更新も盛り上がらず ユーロに奪われた「調達通貨」の座
ドル/円が半年ぶり高値を更新した。しかし、年初来の値幅が過去最低にとどまる動きの鈍さは相変わらずで、変動率の上昇が見込まれると買われるオプションは、最安値を割り込んだ。2016年1月21日撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)
ドル/円が半年ぶり高値を更新した。しかし、年初来の値幅が過去最低にとどまる動きの鈍さは相変わらずで、変動率の上昇が見込まれると買われるオプションは、最安値を割り込んだ。膠着の一因には、キャリー取引の調達通貨というこれまでの円の特性が、ユーロ圏などの低金利政策で薄らいでいることも影響している。
ドル/円の予想変動率、再び過去最低
27日海外市場の取引で、ドルは一時109.61円まで上昇。半年ぶり高値をつけた。米経済指標の好調ぶりを受けて米金利が上昇し、ドルを押し上げたほか、それを好感した株高が円の売り圧力につながった。
しかし、半年ぶり高値更新による高揚感は、市場にほとんどない。年初来の値幅は104.10─112.40円と上下わずか8.30円。変動相場制移行後に初めて10円を割り込んだ昨年を、さらに下回っているためだ。
ドルが直近高値を更新するのと同時に、通貨オプション市場ではドル/円の予想変動率(インプライド・ボラティリティー)3カ月物が4月の水準を下抜け、過去最低水準へ到達した。参加者の多くが「どうせドル/円はレンジ」(FX会社幹部)と、半年ぶり高値を冷ややかな目で見ていることが分かる。
ドルは堅調でもドル/円が動かぬ理由
世界的な低金利で主要通貨の値動きが鈍っているとはいえ、ドル/円の不動ぶりは突出している。G7通貨とスイスフラン、アジアで人気の豪ドルとNZドル、欧州のノルウェークローネ、スウェーデンクローナ、デンマーククローネを含めた10通貨の年初来対ドル変動率は、最も大きいのがスウェーデンクローナのマイナス7.5%。最も小さいのが円で、ほぼゼロ%にとどまる。
ドルそのものは堅調だ。10年物国債金利がギリシャも上回る1.7%台という「高金利通貨」として世界から資金を集め、主要通貨に対する総合的なドルの値動きを示すドル指数<.DXY>は現在、年初来で2%程度上昇している。
その堅調なドルに引けを取らないほど円が上昇しているために、ドル/円という通貨ペアが動かなくなっているのが現状だ。
円が買われているのは、リスクオフの買いだけではない。例えばドルの独歩高が進む際は、円より流動性の高いユーロや英ポンドなどへ売りが集中する。ドル高とユーロ安が値動きを主導することになり、ユーロ/ドルとユーロ/円がともに下落。結果的にドル高でもドル/円は横ばいが続く、という仕組みもある。