脱メーカー狙うトヨタ あらゆる移動サービス提供する「Maas」本格展開へ
トヨタ自動車が28日、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の実証実験として進めてきた「my route(マイルート)」の本格展開に乗り出した。写真はロサンゼルスで2017年11月撮影(2019年 ロイター/Mike Blake)
トヨタ自動車が28日、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の実証実験として進めてきた「my route(マイルート)」の本格展開に乗り出した。自動車の所有から利用への動きが進む中、トヨタは「自動車をつくって売る会社」から、移動に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティカンパニー」への転換を目指している。「マイルート」はその試金石となる。
新たな収益の芽
「マイルート」が提供するMaaSは、スマートフォンのアプリ利用者が、電車やバス、タクシー、レンタカー、カーシェアなど多様な移動手段を組み合わせ、目的地までの最適なルートを検索したり、乗車予約・決済ができたりするサービス。
ルート周辺の店舗・イベント情報を提供するほか、自動車メーカーらしい情報も活用する。例えば、道路の渋滞状況によってバスの到着時間が変わることから、道路状況を反映した交通手段や最適なルートを提案することで、既存の経路検索サービスとの差別化を図る。
トヨタは昨年11月から西日本鉄道(西鉄)と福岡市で「マイルート」の実証実験を行ってきたが、今回はサービス提供地域を北九州市にも広げ、新たに九州旅客鉄道(JR九州)が参画した。
トヨタがMaaSに取り組むのは、乗用車が今までのようには売れなくなる時代の到来に備え、新たな収益の芽を育てるためだ。
プラットフォーマーとして存在
自動車メーカーとしてレンタカーやカーシェアのサービスと車両を提供する以外にMaaSに組み込めそうなのは、観光地や駅から自宅までの近距離移動用のキックボードや車いすなど超小型電動モビリティーだ。
SBI証券の遠藤功治企業調査部長は、超小型モビリティーは「MaaSの布石になり得る」とみている。トヨタは来年冬ごろに電動キックボードのような立ち乗り型、21年に座り乗り型と車いすに連結できるタイプの超小型モビリティーを投入する予定だ。
トヨタはすでに超小型電気自動車「iーROAD(アイ・ロード)」などのシェアサービス実験も展開しており、「マイルート」での超小型モビリティ―の活用も「当然、検討していく」(担当者)という。
超小型モビリティーの販売価格は乗用車に比べてケタ違いに安く、従来事業の規模に育てるのは容易ではない。PwCコンサルティングの早瀬慶パートナーは、トヨタに限らず、どの自動車メーカーにとっても今後は「オペレーターやプラットフォーマーとしてのビジネスモデルが不可欠」と話す。
アプリの利用は無料とする一方、トヨタは「マイルート」のプラットフォームや決済システムを開発・運営し、収益の機会を探る。パートナー企業の西鉄やJR九州からプラットフォーム利用料を得て、同企業の要望に合わせて1日乗車券など「マイルート」でのサービスを開発する。独自の電子決済手段「トヨタ Wallet」やレンタカー・カーシェアのサービスも連携させる。