最新記事

自動車

脱メーカー狙うトヨタ あらゆる移動サービス提供する「Maas」本格展開へ

2019年11月29日(金)17時39分

社会課題解決、顧客利便性の視点が鍵

早稲田大学ビジネススクールの根来龍之教授は、「マイルート」の本格展開を、トヨタが標榜するモビリティカンパニーへの「転換に向けた一歩になる」と評価した。「顧客行動の分析に不可欠な独自の電子決済手段を組み込んだ上、自動車メーカーが交通事業者を巻き込むことに成功した」からだ。日本では特に、JR九州など「各地域の交通機関と提携しないとMaaSへの参入は困難」(輸送業界幹部)とされる。

トヨタは日本の各都市で今後、「積極的に」(広報)順次展開していく構えだが、具体的な時期は示していない。根来氏は「全国展開には課題がある」と指摘。一部のJRや私鉄は自らMaaSを主導すべく他の地域ですでに同様のアプリを実験しており、「トヨタのサービスには簡単にのってこないかもしれない」とみる。

MaaSをめぐる競争は激化している。交通事業者に加え、新興企業の参入も相次ぐ。世界初のMaaSアプリとして知られるフィンランドの「Whim(ウィム)」も12月から千葉・柏の葉で実験的にサービスを開始。ウィムを運営するMaaSグローバル社には三井不動産が出資しており、来年初めにサービスを本格展開する予定だ。

PwCの早瀬氏は、MaaSに挑む自動車メーカーに必要な視点として「自動車をどう使ってもらうかという発想ではなく、何が社会課題で、いかに解決していくか」を挙げる。

トヨタは「マイルート」とは別に、ソフトバンクと設立した「モネ・テクノロジーズ」でもMaaSの事業化に向け動いている。モネには多業種から420社(10月末時点)が参加している。モネとも合流すれば、取り組みに広がりが出そうだ。「マイルート」担当者は「顧客の利便性向上のため、あらゆる可能性、連携を検討していきたい」と話している。

(白木真紀 編集:平田紀之 石田仁志 佐々木美和)

[東京 29日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米関税、マイナス影響は52% 影響生じてない46%

ビジネス

アックマン氏のパーシング、年初来の運用成績マイナス

ワールド

ドイツ極右AfD、世論調査で初の首位 既成政党への

ビジネス

ミネベアミツミ、芝浦電子にTOB 1株4500円
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた考古学者が「証拠」とみなす「見事な遺物」とは?
  • 4
    【クイズ】ペットとして、日本で1番人気の「犬種」は…
  • 5
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 6
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    毛が「紫色」に染まった子犬...救出後に明かされたあ…
  • 9
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 10
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 9
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 10
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中