脱メーカー狙うトヨタ あらゆる移動サービス提供する「Maas」本格展開へ
社会課題解決、顧客利便性の視点が鍵
早稲田大学ビジネススクールの根来龍之教授は、「マイルート」の本格展開を、トヨタが標榜するモビリティカンパニーへの「転換に向けた一歩になる」と評価した。「顧客行動の分析に不可欠な独自の電子決済手段を組み込んだ上、自動車メーカーが交通事業者を巻き込むことに成功した」からだ。日本では特に、JR九州など「各地域の交通機関と提携しないとMaaSへの参入は困難」(輸送業界幹部)とされる。
トヨタは日本の各都市で今後、「積極的に」(広報)順次展開していく構えだが、具体的な時期は示していない。根来氏は「全国展開には課題がある」と指摘。一部のJRや私鉄は自らMaaSを主導すべく他の地域ですでに同様のアプリを実験しており、「トヨタのサービスには簡単にのってこないかもしれない」とみる。
MaaSをめぐる競争は激化している。交通事業者に加え、新興企業の参入も相次ぐ。世界初のMaaSアプリとして知られるフィンランドの「Whim(ウィム)」も12月から千葉・柏の葉で実験的にサービスを開始。ウィムを運営するMaaSグローバル社には三井不動産が出資しており、来年初めにサービスを本格展開する予定だ。
PwCの早瀬氏は、MaaSに挑む自動車メーカーに必要な視点として「自動車をどう使ってもらうかという発想ではなく、何が社会課題で、いかに解決していくか」を挙げる。
トヨタは「マイルート」とは別に、ソフトバンクと設立した「モネ・テクノロジーズ」でもMaaSの事業化に向け動いている。モネには多業種から420社(10月末時点)が参加している。モネとも合流すれば、取り組みに広がりが出そうだ。「マイルート」担当者は「顧客の利便性向上のため、あらゆる可能性、連携を検討していきたい」と話している。
(白木真紀 編集:平田紀之 石田仁志 佐々木美和)
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