「よくないね!」フェイスブックが仮想通貨リブラで窮地に
The Cost of Being Hated
ただし、政府との関係では信用はものをいう。ザッカーバーグを喚問した連邦議会はもとより、州や市の議会もそうだし、フェイスブックが日々折衝している米連邦取引委員会(FTC)、米証券取引委員会(SEC)、内国歳入庁(IRS)などの規制当局もそうだ。
裁判所もそこに加わる。IBMの幹部が以前こう嘆いた。わが社はあまりに多くの訴訟を抱えており、もはや小さなコンピューター部門のある巨大な法律事務所のようになった......。
フェイスブックの信頼性が大きく揺らげば、各国政府との折衝を担当する幹部たちの仕事はますます困難を極め、弁護士やコンサルタントに支払う費用は途方もなく膨らむだろう。
既にそうした事態は起きている。民主党のブラッド・シャーマン下院議員は、リブラは9.11同時多発テロ以上にアメリカを脅かしかねないと議会で発言した。今頃マンハッタンのどこかの会議室で、高額の報酬を取るPRコンサルタントがこの発言を人々の記憶から消し去るアイデアを練っているはずだ。
だがそれ以上に信用と好感度がものをいうのは、人材の確保についてだ。
従業員もこれから入社を希望する人も、会社のイメージを非常に気にする。誰だって自分が勤めている会社の名前を隠さなければならないのは嫌だし、勤務先の評判のせいで子供がいじめられたり、妻が仲間外れにされたりするのは嫌だ。
会社の評判が落ちれば、離職率は上がり、優秀な人材を確保するには給与を上げざるを得なくなる。最悪の場合、どんなに厚遇しても、人材流出が止まらなくなる恐れもある。
フェイスブックの株が明日にも紙くずになる心配はないだろう。だが経営陣は議会で延々と責め立てられ、人材確保に手を焼き、謝罪と釈明に追われる。
本業以外の問題に膨大な時間を取られてしまうのだ。信用を失い、嫌われたツケはいつか必ず回ってくる。
<本誌2019年8月27日号掲載>
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