インバウンド消費拡大のカギを握るMICEとは
2──消費額の大きいMICE
一人当たりの消費額を引き上げる方策として、MICEに重点を置くことが挙げられる。MICEとは、Meeting(企業等の会議)、Incentive travel(報奨・研修旅行)、Convention(国際会議)、Exhibition(展示会・見本市)の頭文字をとった造語であり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称をいう2。MICEの特徴として、訪日外国人数の増加や関連産業間のシナジーによる経済波及効果の大きさなどを挙げることができるが、注目したいのはMICE関連で日本を訪れる外国人の一人当たりの消費額の大きさである。2018年のMICE国際競争力強化委員会(観光庁)において公表された「我が国のMICE国際競争力の強化に向けて(提言)」によると、2016年のMICE関連の訪日外国人消費額は1,500億円と示されている。また、同じく観光庁の「2017年MICEの経済波及効果算出等事業」によると、2016年のMICEによる訪日外国人数は57万人と推計されている。ここから、MICE関連の訪日外国人の一人当たりの消費額は26.3万円と導かれ、これは全体の訪日外国人の一人当たりの消費額より7割高い水準である。
2016年の実績をもとにすると、全体のうちMICE関連の訪日外国人の割合は2.4%、訪日外国人消費額は4.1%であった(図表3)。MICE関連の訪日外国人の割合が増加すれば、全体の訪日外国人一人当たりの消費額の平均が引き上がり、訪日外国人消費額の政府目標に対して迫ることができる。
日本においてMICEの注目度が高まってからまだ歴史は浅いが、1970年代からMICEを率先して国の重要分野と捉え、現在では世界有数のMICE開催拠点として知られるシンガポール3を例にとると、シンガポールを訪れる外国人のうちMICEへの参加を目的とした外国人の割合は2015年から2017年の平均で5.7%となっている4。同じアジアの国として、日本でも積極的なMICEの誘致を行うことにより、シンガポールと同水準までMICE関連の訪日外国人の割合を引き上げることができるはずである。これが実現した場合、2016年の実績をもとにすると、MICEは訪日外国人消費額の1割弱を占める分野となる。
3──今後のMICEへの期待
2020年のオリンピック終了後には観光目的の訪日外国人数が頭打ちとなることが考えられる。今後も訪日外国人数の伸び率を維持するためには、ビジネス目的での訪日外国人の呼び込みが必要となることが想定される。したがって訪日外国人数の維持という観点からも、今後はより一層MICEの重要度が高まるだろう。
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2 観光庁HPより引用
3 杉本興運「シンガポールにおける観光とMICEの発展」(2017年)
4 Singapore Tourism Board「Annual Report on Tourism Statistics」(2015~2017年)