最新記事

フェイスブック

G7財務相会議、FBの仮想通貨「リブラ」に懸念 デジタル課税のあり方も課題に

2019年7月18日(木)10時29分

7月17日、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が17日、フランス北部シャンティイで2日間の日程で始まった。写真は6月21日撮影(2019年 ロイター/Dado Ruvic)

主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が17日、フランス北部シャンティイで2日間の日程で始まった。財務相らは、フェイスブックが発表した仮想通貨「リブラ」導入計画を巡り、まずは厳しい規制上の問題を克服する必要があるとの考えを示した。

ハイテク大手が、通貨発行など政府の領域にも踏み込みつつある状況に不安が広がる中、今回のG7財務相・中銀総裁会議ではハイテク大手が持つ力の抑制が焦点となる。

議長を務めるフランスのルメール経済・財務相は記者団に対し、「国家の主権を危険にさらすことはできない」と発言。「会議では、最近のリブラ計画発表を巡る懸念と、緊急の対応が必要との認識が共有された」と語った。

ドイツのショルツ財務相は記者団に対し、フェイスブックの計画は「熟慮されたもの」とは思えないとし、データの安全性を巡る問題があると発言。「われわれは迅速に対応すべきであり、全ての法的・規制上の問題が解消されない限り、(リブラは)導入できないと私は考えている」と語った。

今年のG7議長国であるフランスは先に、欧州中央銀行(ECB)のクーレ専務理事に対し、リブラのような仮想通貨を検討するG7作業部会の設立を要請。クーレ専務理事は今回の財務相・中銀総裁会議で、事前報告書を提示した。

中銀総裁らは、フェイスブックが預金業務を行いたいなら、銀行免許の取得が必要であり、それは銀行業界の厳格な規制の対象になることを意味すると指摘した。

また、一部の参加者からは、金融規制では決済企業に顧客の基本情報の保持を義務付けていることから、匿名の取引を認めること自体に無理があるとの声も上がった。

日本銀行の黒田東彦総裁は、リブラが将来的に広く流通することを視野に、各国が協調して対処すべきとの考えを表明。不正取引や独占を防ぐには「国際的に必要な規制を考える必要がある」とし、G7各国中銀にとどまらず、「金融当局や財務当局も含めて検討されていくことになる」との見通しを示した。

このほか、ハイテク大手に対する課税のあり方もG7の課題だ。フランスは今回の財務相・中銀総裁会議で、法人税の最低税率設定への幅広い支持を得たい考えだ。

フランス財務省関係者によると、英国とカナダは具体的な税率の設定に消極的であるため、今回のG7会議での合意は、最低税率やそのレンジには踏み込まず、広範な指針での合意になる見通し。

ルメール経済・財務相は「われわれが今回、デジタル課税の大枠の原則に関してG7レベルで合意しなければ、経済協力開発機構(OECD)の129カ国が合意を目指すのは難しくなるだろう」と語った。

[シャンティイ(フランス) 17日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20190723issue_cover-200.jpg
※7月23日号(7月17日発売)は、「日本人が知るべきMMT」特集。世界が熱狂し、日本をモデルとする現代貨幣理論(MMT)。景気刺激のためどれだけ借金しても「通貨を発行できる国家は破綻しない」は本当か。世界経済の先行きが不安視されるなかで、景気を冷やしかねない消費増税を10月に控えた日本で今、注目の高まるMMTを徹底解説します。

20250211issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月11日号(2月4日発売)は「中国経済ピークアウト」特集。人類史上かつてない人口減で「アメリカ超え」に赤信号 [PLUS] DeepSeekの実力

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、ホンダとの統合協議を白紙に 取締役会が方針確

ワールド

「ガザ所有」のトランプ発言、国際社会が反発 中東の

ビジネス

EU、Temu・SHEINに販売責任 安価で危険な

ビジネス

独プラント・設備受注、昨年8%減 2年連続のマイナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 2
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 5
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 6
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 7
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 8
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 9
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 10
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中