最新記事

貿易戦争

G20大阪サミットで米中首脳会談へ 貿易戦争、両者がもつ切り札は?

2019年6月21日(金)11時20分

●外交上の「非協力」と軍の配備

北朝鮮やイランといった国際的な問題で、米国への協力を減らす可能性がある。また、南シナ海や台湾周辺で軍事活動を拡大する可能性がある。

米国のカードは

一方、米国の対抗策としては以下の措置が考えられる。

●追加関税

米国は中国からの輸入品に課す関税を引き上げる可能性があり、その権限はトランプ大統領が握っている。

トランプ政権はこれまで関税の対象外だった中国製品への課税へ向け準備を進めている。

さらに1つの選択肢として、機械や半導体、自動車・航空機部品、電子部品など昨年7月と8月に関税を課した中国製ハイテク製品の税率を引き上げる措置が考えられる。

●中国企業に対する制裁

米国は、知財窃盗や制裁違反、人権侵害などがすでに指摘されている中国企業に追加制裁を課す可能性がある。

トランプ政権がファーウェイに行ったような、特別な許可なしに米企業と取引することを禁止するブラックリスト対象企業を拡大するかもしれない。

米政府はすでに、中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)や浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)への制裁措置を検討している。両社とも、少数民族ウイグル族などイスラム教徒の収容施設における監視に関与している。

問題は、対象となる中国企業と取引のある米企業もダメージを受けることだ。

米政府はまた、次世代通信規格「5G」からファーウェイを排除するよう、外国政府への圧力を強化することもできる。

●司法省による取り締まり

司法省は、中国からの経済や安全保障面での脅威に対抗するための取り組みの一環として、引き続き米企業から技術や営業秘密を盗む中国のスパイやハッカーの摘発を続ける可能性が高い。

●外交と軍事力の使い道

米軍は台湾海峡や南シナ海で「航行の自由」作戦を継続しており、すでに緊張が高まっている。中国側は、自国の一部とみなす台湾への主権を確認するために、必要とあれば武力行使も辞さない構えを強めている。

米艦艇は今年に入り、少なくとも月1回は台湾海峡を航行している。米国はこうした航行作戦を昨年7月に再開させた。

トランプ政権は、ウイグル族に対する人権侵害の容疑がある中国政府の有力高官に制裁を課すこともできる。

また、北朝鮮の核開発計画に資金や資材を提供している中国企業の摘発を強化する可能性もある。

(翻訳:山口香子、編集:久保信博)

[ワシントン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中