G20大阪サミットで米中首脳会談へ 貿易戦争、両者がもつ切り札は?
米中貿易戦争の激化は、両国が相手から譲歩を引き出そうと圧力を強め合うなか、関税措置の応酬を越えた領域に突入している。写真は北京の天安門に掲げられた毛沢東氏の肖像画の前ではためく米国旗。2017年11月撮影(2019年 ロイター/Damir Sagolj)
米中貿易戦争の激化は、両国が相手から譲歩を引き出そうと圧力を強め合うなか、関税措置の応酬を越えた領域に突入している。
トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は、今月28─29日に開かれる20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に合わせて首脳会談を開く。
トランプ氏は、会談で貿易協議が進展しなければ、中国からの輸入品に追加関税を課すと表明している。一方で中国の国営メディアによると、中国が次の交渉材料としてレアアース(希土類)を使ってもおかしくない。米国は衛星から電気自動車用バッテリーに至るハイテク製品の生産に必要なレアアースの供給を中国に依存している。
米中双方が今後取り得る手段を検証した。
中国が取り得る措置
●レアアースを標的に
習近平・国家主席は5月、中国南部のレアアース企業を訪問した。貿易戦争の一環で、ハイテク機器や軍事装備に不可欠なレアアースの供給を停止するのではないかとの憶測が飛び交った。中国は、米国が使うレアアースの80%を供給している。
●関税の引き上げ
中国は、現在も報復関税を課していない100億ドル(1兆800億円)相当の米製品に、関税を課すことができる。
中国政府は昨年12月に米国車に対する関税の一部を撤回しているが、それを再度課税することもできる。
中国はまた、大豆などの一部米製品の関税率を25%からさらに引き上げることができる。貿易戦争が激化するまで、中国は米国産大豆の最大の輸入国だったが、これを機に輸入はほとんど止まってしまった。
再度関税率が引き上げられれば、中国の大豆輸入業者は2018年と同様、ブラジルなどからの調達を増やすことになり、米国の農家に打撃となるだろう。これは、2016年の米大統領選でトランプ氏勝利に貢献した農業層を狙った関税といえる。
半導体やその製造装置など、ハイテク製品に対する関税が引き上げられる可能性は低い。代替の供給元を探すのは中国にとって難しいからだ。
中国はこれまでのところ、米国からの輸入品として最も高価な航空機大手ボーイングの旅客機は関税対象にしていない。中国の航空会社は、増大する需要に応えようと拡大を急いでおり、ボーイング機に関税を課せば、国内旅客業の発展を遅らせる可能性がある。
中国が、ボーイングの代わりに欧州のエアバスから調達を増やす可能性はある。客室内の通路が1本の国産狭胴型ジェット旅客機「C919」が完成するまでの間、欧州への依存が数年に渡って高まることになる。