最新記事

中国経済

対米貿易戦争が直撃 中国メーカー「苦肉」の生き残り策

2019年5月7日(火)11時08分

価格上昇は不可避

米カリフォルニアに拠点を置くACOパワーの創業者ジェフリー・タン氏によれば、同社は中国製の太陽光発電冷蔵庫の一部について、約10─15%の値上げに踏み切ったという。

「選択の余地はなかった」とタン氏は言う。「値上げせざるを得ない」

中国外では同社が扱うポータブル冷蔵庫を低コストで生産できないとタン氏は言う。だが、貿易に関して米中が何の合意も打ち出せず、関税率が上昇するならば、この構図も変化する可能性がある。「部品をすべてベトナムに運んで、そこで組み立てることになるのではないか」

Aufine Tyreは昨年、カリフォルニア州の倉庫を借り、製品を搬入した。後に実際に導入されることになった反ダンピング関税を予期した動きである。また同社は、やはり関税を回避する手段として、タイ国内のタイヤ製造プラントの操業をまもなく開始する予定だ。

同社の営業担当マネジャーを務めるジェーン・リュウ氏は、それぞれ220─240本のタイヤを収めたコンテナを月50個、タイから出荷し、その後はさらに量を拡大する計画だと語った。

広州交易会の出展企業のなかには、中国政府が4月初めに国内の付加価値税を16%から13%に引き下げたことや、輸出に関する税の還付を公約したことを歓迎する声があった。

「こうした措置はわれわれをある程度、守ってくれる。さもなければ損失が出ていた」と語るのは、LED照明を製造する深センの寧波宇興電子で営業を担当するウィリス・ユアン氏だ。

米国の関税対象製品には含まれない監視カメラを製造している深センのSmarteye Digital Electronicsは、税制優遇措置のおかげで価格引き下げが可能になった、と営業担当マネジャーのシンプル・ユー氏は語る。「大きくコスト削減できたから、低価格で販売できる」

為替レート懸念

だが、同社にも懸念すべき点はある。家賃や人件費の上昇によって、従業員数を削減を余儀なくされたのだ。

ユー氏は、貿易紛争が人民元の対ドル相場に与える潜在的な影響も心配だと指摘。「以前は1ドル6.9元だったのが、今では1ドル6.7元だ。6.5元まで上がるのではないかと心配している」

EUが1月、中国製電動バイクに18.8─79.3%の反ダンピング関税を課したことに対して、電動バイク製造各社はすばやく反応した。EU域内でバイク組立を一部開始した企業は多い。Zhejiang Enze Vehicleは、ポーランドとフィンランドで組立を開始した。

「バッテリー、フレームその他の部品を調達し、別々に梱包して欧州に送り、提携先企業に組み立てさせている」と同社営業部門代表のディラン・ディー氏は言う。

プラスチック製分度器や映画館向けのポップコーンカップなどを製造するAnhui Light Industries Internationalは、トランプ米大統領による米輸入関税引き上げによって、10億元(約166億円)以上の損失を出したという。

それでも、同社を率いるハン・ゲン氏は、貿易紛争は解消されるだろうと楽観的だ。「米国にとっても、中国にとっても良いことはない」とハン氏は語り、トランプ大統領も貿易紛争が企業を傷つけていることを知り、「紛争を終らせるだろう」という見解を示した。

「(その日が来たら)また米国向けに販売できる。われわれは稼がなければいけない。稼ぐのが嫌いな人はいない」

(翻訳:エァクレーレン)

John Ruwitch

[広州(中国) ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241210issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年12月10日号(12月3日発売)は「サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦」特集。地域から地球を救う11のチャレンジとJO1のメンバーが語る「環境のためにできること」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国大統領が戒厳令、国会は「無効」と判断 軍も介入

ビジネス

米求人件数、10月は予想上回る増加 解雇は減少

ワールド

シリア北東部で新たな戦線、米支援クルド勢力と政府軍

ワールド

バイデン氏、アンゴラ大統領と会談 アフリカへの長期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計画──ロシア情報機関
  • 4
    スーパー台風が連続襲来...フィリピンの苦難、被災者…
  • 5
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 6
    なぜジョージアでは「努力」という言葉がないのか?.…
  • 7
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    「92種類のミネラル含む」シーモス TikTokで健康効…
  • 10
    赤字は3億ドルに...サンフランシスコから名物「ケー…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中