ファーウェイと対イラン制裁を結んだ点と線 米当局「潜航捜査」の舞台裏
米国の要請を受けたカナダ当局による昨年12月の突然の逮捕で、ファーウェイの孟晩舟副会長は、2大経済大国がぶつかる貿易戦争の中心的存在となった。写真はファーウェイのロゴと星条旗。2019年1月撮影(2019年 ロイター/Dado Ruvic)
米国の要請を受けたカナダ当局による昨年12月の突然の逮捕で、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟(メン・ワンツォウ)副会長は、2大経済大国がぶつかる貿易戦争の中心的存在となった。
トランプ米大統領は当時、ロイターとのインタビューで、対中通商交渉の妥結に資するなら、この件に介入すると発言。2月にも同様の考えを示した。
ファーウェイの最高財務責任者(CFO)を兼務する孟副会長。彼女の弁護士は6日、カナダの裁判所に対し、トランプ氏のこの発言を根拠に、容疑には政治的な要素があるとの懸念を持っていると伝えた。
しかし、ファーウェイがイランに対する米制裁を回避した疑いに対する米当局の捜査は、トランプ氏の通商政策に起因するものではない。ロイターは10人にのぼる捜査関係者に話を聞き、関連書類を閲覧。米当局はトランプ氏が中国に激しい貿易戦争を仕掛けるはるか前から、ファーウェイの活動を詳細に調べていたことが明らかになった。
中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)に対する数年がかりの捜査を経て、米当局は同業のファーウェイに注目するようになった。その捜査は、空港を通過するファーウェイ社員の電子機器から集めた情報によるところが大きかった。
転換点は、2017年8月だったと関係者2人は証言する。米大統領選へのロシア介入疑惑の捜査監督者として知られるローゼンスタイン司法副長官が、ファーウェイの銀行詐欺疑惑に対する捜査の指揮を、ブルックリンの連邦検察の手にゆだねたのだ。
15カ月後、これがカナダでの孟氏拘束につながることになった。
ファーウェイとZTEに対する捜査を加速させたのは、6年前のロイターのスクープ記事だった。記事は両社によるイラン制裁違反疑惑の詳細や、イランとの取引でフロント企業の役割を果たした疑いのあるスカイコム社とファーウェイの緊密な関係について報じた。
ファーウェイの広報担当者は今回、ロイターの問い合わせに対し、制裁違反の容疑を否定。それ以上はコメントしなかった。孟氏は無実を主張している。イランへ違法に機器を輸出したことを認めているZTEにもコメントを求めたが、同社は応じなかった。
米司法省の広報官は、「訴追にあたり、一切の政治的介入なく、証拠と法の支配に基づき」捜査をしているとコメントした。