最新記事

徹底解剖 アマゾン・エフェクト

「アマゾン本体とAWSが表裏一体なのが最強の秘訣」田中道昭教授

INTERPRETING JEFFISM

2019年2月26日(火)10時45分
森田優介(本誌記者)

――ベゾスはどんな人物なのか。冷徹な人柄とも伝えられるが。

ベゾスはビッグデータ分析や精緻な経営管理にたけたロジカルで冷徹な経営者だが、「ビジョナリー」と称賛される、創造的で情熱的な経営者でもある。人間的にも二面性があるようで、フレンドリーだったかと思うと怒り狂ったり、陰と陽がある。「火星人のようだ」と称した身近な人物もいる。地球人としてはちょっと問題があるが、火星人と考えればいい奴だと(笑)。

要するに、いわゆる「サイコパス的」なのだろう。私は上場企業の経営者の参謀役を一番の仕事としており、多くの経営者を見てきたが、大きく成長している企業の創業経営者は大体、サイコパス的に突き抜けた人物だ。面白いのは、身近な幹部にはとても厳しいが、一般社員に対しては優しいという人が多いこと。だから近しい人に聞くと「ひどい人です」(笑)と。

――他の代表的なテック企業の経営者との違いは?

似ている面もあるが、それぞれ特徴がある。最近だとテスラのイーロン・マスクはベゾス以上に変わり者かもしれない。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグは固い信念を持っており、自負心が強い。尖がっていて、移り気な人物だ。

創業経営者ではないが、グーグルCEOのサンダー・ピチャイはいわゆるいい人だ。グーグルでは「優秀でなおかつ好ましい人物」を求めているというし、他のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の経営者と決定的に異なる。

――アップルとマイクロソフトを抜いて、時価総額で世界1位になった。アマゾンはなぜこれほど強いのか。

さまざまな要因が指摘されるが(本誌「徹底解剖 アマゾン・エフェクト」特集22ページ参照)、1つだけ挙げるとするなら、アマゾン本体とAWS(アマゾンウェブサービス)が表裏一体であることが、アマゾンが最強であることの秘訣だ。中核事業はいくつもあるが、ECの本体とAWSが車の両輪になっており、相乗効果を生み出している。

ECでは、中国のアリババというライバルがあるが、北米では最強で、最先端のテクノロジーを使っている。一方で、クラウドコンピューティングでは世界一の企業だ(編集部注:クラウド事業の2018年7~9月期の世界シェアは、アマゾンが1位で32%、マイクロソフトが2位の17%)。アマゾン(のEC)本体からすると、世界一のクラウドコンピューティングが背後に控えている。AWSからすると、アマゾン本体が最大のクライアントだ。

――AWSを使えば、企業は自前でサーバーを開発、保守管理しなくて済む。そういうサービスを提供しているのがAWSと理解していたが、最大のクライアントがアマゾン本体とはどういうことか。

確かにAWSにはB2Bのクライアントが多数あり、それらにクラウドサービスを提供しているが、アマゾン本体から要望を受けてAI(人工知能)化を進めてきたのであり、そこが最強たるゆえんだ。簡単に言えば、AWSはもともとアマゾンのIT部門で、それが単独でビジネスを行うようになった。だからAIを使った音声認識アシスタントの「アレクサ」にしても、AWSが開発部隊として背後にいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドバイ国際空港、2024年の利用者は過去最多の92

ワールド

民間機近くの軍用ヘリ飛行を疑問視、米上院議員 空中

ワールド

ロシアの穀物輸出、EUの船舶制裁が圧迫 中銀が報告

ビジネス

大阪製鉄が自社株TOBを実施、親会社の日本製鉄が応
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中