2019年世界経済「2つの危機」 それでもアメリカは独り勝ちする
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長期に及ぶ景気拡大を可能にしたのは2008年の金融危機そのものでもある。深刻な経済危機は通常の景気変動とは異次元の景気後退をもたらす。通常の不況なら、回復の兆しが見えればすぐに消費が拡大するが、経済危機後は冷え切った消費や投資意欲が上向くのに時間がかかり、その代わり軌道に乗れば安定した回復が長く続く。
問題はトランプ政権が所得格差にほとんど何の手も打っていないこと。そのために起きる社会的・政治的混乱が米経済の足を引っ張る恐れがある。大型減税で主に企業と富裕層が潤う一方、輸入品への高関税と移民の流入制限は長期的に経済に打撃を与える。トランプ政権の経済政策は「ステロイド剤を打つようなもの」と、ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授(経済学)は言う。「何年か好調を謳歌できても、手痛いしっぺ返しを食らうことになる」
それでもなお、近い将来に実体経済が悪化する恐れがあるのはアメリカ以外の国々だ──多くの専門家がそう口をそろえる。これまで世界経済の成長を引っ張ってきた中国だが、専制的で内向き志向に傾く習シー・チンピン近平国家主席が自国経済の失速に対応できるか、あるいは中国企業の「桁外れに膨張した債務」を解消できるか、かなり危うい状況だと、コロンビア大学のアダム・トゥーズ教授(歴史学)は指摘する。
米中貿易戦争の激化を受けて、IMFは中国経済の2019年の成長率予想を6.2%に下方修正した。大半の国にとっては十分高い成長率だが、中国政府が国民の不満を抑え込むにはもっと急速な成長が必要だ。
インドとASEAN諸国の経済は安定しているようだ。中南米は「苦戦中」だと、IMFのミレシフェレッティは言う。アルゼンチン経済は失速、ブラジル、メキシコも不調で、ベネズエラは既に破綻している。日本経済は超低空飛行を続けているが、人口の減少を考慮すれば1%前後の成長率でもそれほど悪くない。ただし、国家が抱える膨大な借金や消費税の増税といったリスク要因はある。
悪化が際立つのはEUだと、PIIEのポーゼンは言う。「反EU感情と経済ナショナリズムが吹き荒れる状況を見れば、米経済のほうがまだましだと言いたくなる」
<2019年1月15日号掲載>
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