毎年1000社ベンチャーが生まれる「すごい」国イスラエルの秘密
自動運転車が事故を避けるためには、車載コンピューターが車線、交通標識、障害物、歩行者、前を走っている車、自分が走っている車線に割り込んでくる車、路面の凍結や積雪など、周囲360度の中で起きていることを把握し、瞬時に解析してブレーキやアクセルを作動させなくてはならない。この機能は、高度ドライバー支援システム(ADAS)と呼ばれ、自動運転車に不可欠の技術である。未来の車はインターネットに接続された「コネクテッド・カー」となる。
1999年に創設されたモービルアイは、ADASの中核となる、画像情報処理システムのパイオニアだ。同社は、自動運転技術が持つ潜在性に世界で最も早く気づき、その実用化をめざした会社である。(15ページより)
現在、世界の大半の自動車メーカーは、モービルアイの技術なしには衝突防止や自動運転車の研究開発が進まないといっても過言ではないとすら著者は言う。
事実、2016年末の時点で、米国のゼネラル・モーターズ、フォード、クライスラー、ドイツのBMW、フォルクスワーゲン、アウディ、日本の日産、本田、三菱、マツダ、フランスのルノー、PSAプジョー、イタリアのフィアット、スウェーデンのボルボ、韓国の現代、起亜など、26社の自動車メーカー・部品メーカーがモービルアイと提携したり、技術を購入したりしているそうだ。
同社の技術がすでに世界中の約1500万台の車に使われていると聞けば、そのポテンシャルを実感できるのではないだろうか。
もちろんこれはほんの一例に過ぎず、つまりモービルアイだけが突出しているということではない。表現としては、イスラエルという国全体がイノベーション力を持っているとしたほうが適切なのだろう。
事実、イスラエル人は起業家精神が旺盛で、毎年およそ1000社のベンチャー企業が誕生している。そして優秀な技術力に注目した外国企業や投資家から多額の資金が流れ込んでいる。
投資しているのは、金融機関などの機関投資家や富裕層。彼らは将来性のあるベンチャー企業に投資することによって、運用益の拡大を目指しているのだ。当然のことながら成功が保証されているわけではなく、ハイリスク・ハイリターンだが、それでも投資家が群がるのは、それだけの価値があると見なされているからなのだろう。
ところでイスラエルのイノベーションの源泉について考えるとき、興味深いことがある。イスラエル国防軍で電子諜報を担当する「8200部隊」の影響力の大きさだ。