災害列島ニッポンで重要度増す再保険市場 損保各社の戦略は?
12月21日、大規模な自然災害の続発で、大手損保各社にとって重要度が増している再保険市場を巡り、スタンスの違いが鮮明化してきた。写真は豪雨の後浸水した倉敷市のガソリンスタンド。7月に撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
大規模な自然災害の続発で、大手損保各社にとって重要度が増している再保険市場を巡り、スタンスの違いが鮮明化してきた。投資マネーの流入で再保険ビジネスの事業環境が厳しくなったとして、東京海上ホールディングスが再保険専門会社を売却する一方、MS&ADホールディングスは再保険子会社を保有したまま事態の好転を待つ戦略だ。方向性の違いが、将来の収益格差につながる可能性が出てきた。
7月の西日本豪雨、9月の台風21号、24号と、今年は自然災害が猛威を振るった。風水災・地震合計の保険金支払いは今年度、業界全体で約1.3兆円に上る見通し。2011年の東日本大震災の時の支払い保険金に匹敵する規模だ。
大規模な自然災害に伴う保険金の支払いと収益への影響をどうコントロールするか、カギの1つが再保険でカバーする割合だ。再保険は損保会社のリスクヘッジの手法で、想定を超える大規模な自然災害の発生に備え、損保会社が再保険会社に保険料を支払う。
再保険市場の構造変化
しかし、再保険市場に起きた「構造的な変化」で、関係者の読みは難しくなった。世界的な金融緩和で主要国の国債利回りが低下し、オルタナティブ投資の対象として再保険市場に投資する保険リンク債が急速に普及した。
保険リンク債は、契約期間中に大規模災害が起きなければ、元本とともに相対的に高い利回りが支払われる一方、ハリケーンや大規模な台風の発生など一定条件を満たすと、元本が発行者への保険金支払いに充てられ、元本がき損するリスクがある金融商品。マクロ経済や金融政策の動向に左右されない点が特徴で、個人投資家やヘッジファンド、年金基金などが投資している。
保険リンク債の1種であるCAT債は17年、新規発行額が初めて年間100億ドルを超えた。18年の発行残高は7月時点で350億ドルを突破し、11年の倍以上の水準。S&Pによると、グローバル再保険会社の資本調達に占めるオルタナティブ投資由来の資本の比率は12年ごろから上昇を続け、今年の第1・四半期時点で16%に上った。
投資マネーの流入増で、いざというとき再保険の保険金を出す主体が増えたため、再保険会社が徴収する保険料は上昇しにくくなった。17年に北米を襲ったハリケーンで、業界関係者は18年の再保険の保険料が上がると予想したが、「結局、それほど上がらなかった」(関係者)という。
発生保険金を再保険でカバーする割合を高めたい場合、保険料に増額圧力が掛からないことは損保会社には好都合だ。しかし、再保険会社の保険料収入は増えにくくなる。