災害列島ニッポンで重要度増す再保険市場 損保各社の戦略は?
分かれるスタンス
大手損保は海外の保険会社を相次いで買収してきた。収益拡大のみならず、大規模な自然災害のリスクを地理的にも、事業的にも分散する戦略だ。だが、ここに来て買収した再保険事業への対応の違いが鮮明化してきた。
再保険を巡る相反する利害の狭間で、現状を維持するのはMS&ADだ。
2016年、英国の保険大手アムリンを6000億円超で買収。アムリンは再保険事業が柱で、再保険市場への投資マネーの流入は逆風だが、MS&ADは売却しない方針。MS&ADホールディングスの広報・IR部長、塩野諭氏は「日本では、来年度に向けた交渉で再保険の保険料が下がりやすい状況を活用する一方、アムリンでは身をかがめながら次の環境変化に備えていく」と話す。
SOMPOホールディングスは、自然災害のリスクを引き受ける海外の再保険事業が損保事業の売上の数%程度。再保険事業の比率を一段と引き下げる予定はない。
ただ、来期の保険金支払いに備え、再保険でカバーする割合をどうするかは未定だ。中間期は元受発生保険金3028億円のうち、約半分の1556億円を再保険でカバーした。
「経営陣は悩みながら議論している」と、損保ジャパン日本興亜・経営企画部の近藤利宣課長は話す。今年相次いだ大規模な自然災害が果たして「ニュー・ノーマル」なのか議論しているという。
東京海上は再保険事業を縮小
2社とは対照的に、再保険専門会社を売却し、再保険事業を縮小するのは東京海上だ。今年10月、トキオミレニアム・リーなど2社の全株式を売却すると発表した。
東京海上の長沼聡史・海外事業企画部部長は「かつての再保険市場には戻らないだろう」と指摘。年金ファンドなどの資金が定着しており、事業環境の大幅な改善は見通せないと話す。
リスク対比の収益性に見合わないものはやらないという規律を示した――。S&Pグローバル・レーティング・ジャパンの久保英次・主席アナリストはこう話し、東京海上の経営判断を評価する。
再保険事業の温存か売却かの違いは今後、収益力の違いとして表れる可能性がある。
(和田崇彦 編集:布施太郎)
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