日本企業はなぜ「お雇い外国人」に高額報酬を払うのか
もう辞めているのに報酬64億円は妥当か
2016年の「会社四季報」(東洋経済新報社)の「年収1億円超の上場企業役員530人リスト」のうちの「上位50人リスト」には、外国人役員が14名入っている。しかも、上位10名のうち、7名が外国人役員である。
そこで、「上位50人リスト」のうちの「外国人役員上位10人リスト」を抜き出してみると以下のようである。
これをみても明らかなように、「外国人役員」は日本の大手企業の会長・社長に比べて、高額所得者であるのは間違いない。
すでに述べたように、1位のN.アローラ氏はソフトバンクグループの孫社長から後継社長候補者として招聘され、多額の入社準備金と高額報酬を付与された人物であるが、すでに同社を退社している。トヨタ自動車の社長、豊田章男氏はオーナー経営者でありながら、年間報酬は3億5100万円である。副社長のルロワ氏の方が高い報酬をとっているというわけだ。これが日本の経営者の報酬水準からみると、妥当かどうかはだれがみても明らかである。
もっとも、米国の大手企業のCEOの年間報酬は桁違いに高額である。参考までにあげておくと、高額報酬上位3人をみると、1位 トーマス・ラトリッジ(チャーター・コミュニケーションズCEO)約108億円、2位 レスリー・ムーンブス(CBSコーポレーション)約75億円、3位 デヴィッド・オコナー(マディソンスクエア・ガーデン・カンパニー)59億円となっている(ZUU online 2018年1月1日より。1ドル=110円換算)。
とはいっても、日本企業のCEO報酬と外国人役員の報酬とを比べると、外国人役員がいかに優遇されているかがよくわかる。
こうした優遇措置は企業が業績を確かにあげているのであれば理解できるが、ソニーブランドの市場価値を低落させた、ソニーの元CEOハワード・ストリンガー氏の経営失敗の教訓は、経営者選びを間違えると、法外な報酬をとられるだけとられて、会社の業績は限りなく倒産に向かう危険が常につきまとう事態を招くことになるということだ。
2005年に、業績低迷の責任をとって辞任した出井伸之CEOが後継社長に選んだのが、ソニーの原点である革新的な「モノ」づくりの専門家ではなく、アメリカの映画事業・映像事業を推進してきたソニー・アメリカのCEOストリンガー氏であった。
ソニーの成長基盤である技術イノベーションを強化しないで、映像事業等のソフト開発に多額の資金を投入した結果、ソニーは2009年3月赤字決算となり、大幅なリストラを行い、優秀な人材が社外に流出した。その後、ますます経営状況は悪化し、ストリンガー氏がCEOを退任する2012年まで、四期連続の赤字決算となり、累計赤字が9193億円にのぼった。
こうしたCEOの経営判断のミスによって、赤字決算になり、株価も就任当時の4000円台から1000円台まで落ち込み、市場からのソニーに対する評価は急落していったのである。それにもかかわらず、ストリンガー氏は高額な役員報酬を2009年に4億1000万円、2010年に8億1450万円、2011年に8億6300万円、2012年に4億4950万円(合計25億3700万円)を受け取っていたのである。
日本の企業であれば、赤字になれば、たとえ契約上、多額な報酬が約束されていても、経営の最高責任者であるCEOは役員報酬の大幅な削減か、経営赤字が黒字になるまで役員報酬返上というのが常識であり、経営者倫理である。
経営者が経営判断ミスの責任をとらないで、社員の大幅なリストラを含めたコストカットをするのは、欧米流の雇われCEOの常套手段である。自分の利益さえ守れば、従業員や取引先のことなどはどうでもいいのであろう。
企業がグローバル化戦略と称して、企業買収競争に走り、多額の借金をかかえ、挙句従業員のリストラをする一方で、高額報酬の外国人役員を雇用するのはいかがなものか。このような「ベニスの商人」的な金儲けを目的とする企業の経営倫理・経営政策・経営戦略そのもののあり方を、厳しく問うていく必要があるだろう。