2年ぶりGDPマイナス成長、デフレ心理の根強さ明確に アベノミクス「力不足」
5月16日、内閣府が16日に発表した今年1─3月の国内総生産(GDP)は、内需の失速で9四半期ぶりにマイナス成長となった。写真は都内で2016年2月撮影(2018年 ロイター/Thomas Peter)
内閣府が16日に発表した今年1─3月の国内総生産(GDP)は、内需の失速で9四半期ぶりにマイナス成長となった。潜在成長率を上回る2年にわたる高成長にもかかわらず、安倍晋三政権が目指す経済の好循環や、デフレ脱却宣言はいずれも達成できていない。想像以上に根強いデフレ心理が高い壁となり、これまでの政策パッケージが「力不足」であったことを浮き彫りにした。
政府内に「成長の中身に課題あった」の声
「これまで成長の中身に課題があったかもしれない」──。 内閣府幹部の1人は、過去2年間の高成長の間に好循環に至らなかった背景について、こう指摘した。
アベノミクス当初の大規模金融緩和と積極的な財政出動を起点に、円安を追い風にしながら世界経済の好調さを企業部門が取り入れ、過去最高益を記録する企業が続出した。しかし、そここから家計部門への本格波及につながることなく、今回の9期ぶりマイナス成長に直面した。
この現象について、野村証券・チーフエコノミストの美和卓氏は、賃金引き上げにボトルネックが発生したためと指摘。生産性の上昇が鈍く、企業は「賃上げに二の足を踏んだ」とみている。
日本生産性本部によると、労働者1人当たりの生産性は最新データの2016年でわずか0.3%の上昇にとどまっている。2010年以降では、消費税引き上げで経済が落ち込んだ14年度を除き、最低の伸びだ。
企業は人手不足の下で、賃上げやロボット化を進めているものの、機械化は必ずしも付加価値の引き上げや賃金の上昇につながっていない、と美和氏は指摘。「経済好循環につながる本丸は、所得水準自体の引き上げにつながる高等教育の充実と人材育成だ」とみている。
安倍政権が、新たな展開として「人づくり革命」を掲げ、学び直しや教育無償化に力を入れ始めたことは、プラスの兆候だと同氏は述べている。