2年ぶりGDPマイナス成長、デフレ心理の根強さ明確に アベノミクス「力不足」
予想超えたデフレ心理の強さ
SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミストの丸山義正氏も、好循環・デフレ脱却に至らなかった最大の要因は、賃金にあるとみている。
しかし、その背景には生産性の問題よりも「安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁が想像した以上のデフレ心理の強さがある」と分析する。
企業が高収益となれば、自然の流れのように家計に恩恵が波及すると予想されたが、全く波及しなかった。
「官制春闘」と批判されながらも、安倍首相が企業に3%の賃上げを求め、賃上げの幅拡大を目差した減税対応を展開しても、今年の春闘の結果を見れば「さほどの効果はなかった」と丸山氏は指摘する。
今回の1─3月期のマイナス成長は、天候要因や直近の高成長の反動といった面が現れたに過ぎず、再びプラス成長に戻るとの見方が民間エコノミストの間では多い。
内閣府幹部は、物価調整後の実質雇用者所得が前期比0.7%増と高めの伸びを示していることを根拠に「消費の基調が崩れたわけではない」と見ている。
「劇薬」が必要との指摘も
だが、そうした見方とは裏腹に、デフレ脱却や経済好循環の達成の日が近づいているとの見方は、むしろ政府内では後退しているようだ。
政府が重視する「生鮮食品とエネルギーを除くCPI」(コアコアCPI)は、今年3月時点で前年比0.5%上昇にとどまり、1%にも届いていない。
また、日銀展望リポートでは、2%物価目標の達成時期に関する文言が削除され、黒田東彦総裁自身も、国会などでデフレ心理の根強さが想像以上に強かったとの見解を率直に示している。
アベノミクスが本格的に始まった2013年以降、潜在成長率を上回る成長が続いてきたものの、企業部門の活性化にとどまり、個人消費に波及しない構図が存在する。既存の政策パッケージでは、この構図を変えるには「力不足」ということもわかってきた。
だが、決め手となる賃上げとデフレ心理解消に有効な特効薬は、まだ見つかっていない。SMBC日興証券の丸山氏は「どこかで高めの賃上げを義務付けるなど、劇薬的な政策で突破口を切り開くことが必要かもしれない」と指摘する。
(中川泉 編集:田巻一彦)
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