その筋トレ用サプリは大丈夫?
「研究用」の筋肉増強剤がネットで流通 Lucy Nicholson-REUTERS
<日本からも個人輸入できるボディービル用薬物「SARM」の得体の知れない魅力と危険>
おなかを引っ込めるだけでなく、マッチョなボディーを手に入れたい――。そんな男性たちにとって、気になる調査結果が発表された。アメリカで未承認の薬物が、筋トレ用サプリとしてインターネットで幅広く流通していることが分かったのだ。
しかも、この選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM、「サーム」として販売している日本語サイトもある)という成分は、「ボディービルダーにとって理想のサプリ」「ステロイドよりも効果的」などとうたわれているが、実際に届いた商品の約半分にはSARMが全く含まれていなかった。
これは米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の研究チームが、11月末に米国医療情報学会誌に発表した論文で明らかにしたもの。通販サイトで購入した44種類のSARMサプリを調べたところ、実際にSARMを含んでいたのは52%で、39%には別の未承認成分が含まれていた。
さらに44製品のうち9%には有効成分が全く含まれておらず、59%はラベルに表示された内容と実際の分量が一致しなかった。つまりインターネットでは、米食品医薬品局(FDA)で認められていないSARMサプリが流通しているが、その中味もラベルもかなりテキトーだ。
SARMとは、筋肉増強剤として知られるアナボリックステロイド(いわゆる筋肉増強剤)と同じ効果を持つとされる薬物群のこと。さまざまな種類があり、骨と筋肉の増強に効くSARMもあれば、前立腺肥大症の治療薬として期待されるSARMもある。
ネット通販の無法地帯
ステロイド剤と同じように、SARMは世界反ドーピング機関(WADA)の禁止薬物リストに含まれており、スポーツ選手は使用することができない。その一方で、アメリカでは最大で400万人の若者が、SARMを少なくとも1度は使用したことがあると、ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のシャレンダー・バシーン男性健康研究部長は指摘する。
「80年代までは、運動能力向上薬を使うのはエリート運動選手に限られていた。ところが90年代に入ると、それが一般の若い男性にも広がった」と、バシーンは語る。「その目的は運動能力を向上させることではなく、贅肉のない筋骨隆々とした体を手に入れることだ」