中国からの資本流出、食い止めが困難な理由
海外に投資する手段の1つは、国内のミューチュアルファンドに外国株の購入を認めている適格国内機関投資家(QDII)制度だ。
ある国際投資銀行の富裕層資産運用担当者は「ヘッジの妥当性を認識している顧客がわたしのところにやってくる。QDIIは非常に高い人気があるので、ある証券会社はQDIIを利用するためだけの手数料を6%に設定しているが、それでも支払う人々がいる」と話した。
別の上海の資産運用関係者も、QDIIの借り入れコストは需給ひっ迫によって最近数週間で高騰していると認めた。
衰えない投資需要
政策担当者は、中国企業がバリューチェーンの上方に位置できるようになるために必要な研究開発投資をしないで、その代わりに幹部が海外の豪華マンションなどに資金を回してしまう事態を懸念している。
ただ残念なことに、中国政府にとって海外への資金流出を食い止めるのは極めて難しい。多くの投資手段は合法である上に、ある意味で中国の国益にかなうものだからだ。
例えば当局は中国企業が海外企業をより買収しやすくして世界における同国の影響力を高めたり、外国の同業者取得による中国企業のバリューチェーン上位化を狙っているが、合併・買収(M&A)の形を取っている資金流出を抑制すると、戦略的な投資までも阻むことになりかねない。
外国投資が中国国内に資金をとどめられてしまうとみなすようになれば、当局が推進する人民元の国際化計画も崩れ去るだろう。
こうした中で複数の運用担当者によると、中国当局は打ち出せる対応策として、QDIIなどの投資枠を停止したり、銀行に資金流出の引き締めを迫るなどの措置を講じている。
当局が今後、さらに資金流出防止の手を打ってくるかどうかはまだ分からない。しかし海外投資需要が衰えると予想する声はほとんど聞かれない。
コメルツ銀行(シンガポール)のアナリスト、ハオ・ゾー氏は「中国国内に存在する個人や企業の膨大な貯蓄資金は現時点で、国内投資からは妥当なリターンを得られないのは明らかだ。その結果、資金流出が長期化し得るあらゆる機会がある」と指摘した。
(Samuel Shen、Pete Sweeney記者)
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